彼女はもどらない (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
彼女はもどらない (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) / 感想・レビュー
W-G
この作者の本は、ミステリとしての驚きは少ないが、扱う題材の良さと展開の面白さで読める。コレもなかなか新鮮なネタを扱っており、ひょっとすると数年したら風化して読むに堪えなくなってしまっているかもしれないが、現時点ではいい感じにスリリング。色々と都合良すぎるように感じる部分も多く、この登場人物の中でいえばこの人があの件に絡んでいるのかなというのが想像つきやすいというのはあるけれども、一気読みは出来た。あと作品の出来とは関係ないが、改題はややこしい。知らずに二冊買う人も出てきそうだしあまりやって欲しくない。
2017/11/20
しんたろー
降田さん2冊目。敏腕編集者・楓とシングルファーザー公務員・棚島、二人の視点で交互に進む物語は、SNSの問題点・現代の職場事情・ストーカー被害など、今の「あるある」を織り込みながら、二人の心理に頷ける部分が多く惹き込まれる。第2章からはイヤミス風になって、楓&棚島に「こらこら!」と説教したくなりながらも「どうなるんだ?」とサスペンスに乗って読む手が早まる。最終章では、多くない登場人物を上手に使い、伏線の回収も巧みで、私にもある「闇」に気付かされゾッとした。後味は悪いが、映像化は不可能な良く出来たミステリだ。
2019/03/20
茜
読み終わって棚島のクズっぷりに腹がたったというのが一番の感想でした。そして見事に騙されたというのが二番目。主人公の楓と棚島が病院で遭遇する場面では、頭が混乱するばかりで「え?どうなっているの?」と前項を遡ってみたり。。。後味がイマイチでしたが私には楓がすごく可哀そうに思えてなりませんでした。やっぱり棚島は許せない。
2019/11/30
utinopoti27
他人のブログに批判的なコメントをしたことがきっかけで、トラブルに巻き込まれるヒロインの物語。SNSがテーマといえば、匿名性の残酷さに起因した悲劇だろうと推測できる。本作もまさにそのとおりなのだが、巧妙に仕組まれた叙述トリックの切れ味が加わったイヤミスという趣向がミソ。作品冒頭で、いきなり加害者と被害者の関係らしきものが明かされると、読者はどうしてもこの設定に縛られてしまう。まあ出来すぎた偶然が不自然と言えるかもしれないが、それなりの辻褄は合っているし、許容の範囲内だろうか。ここは構成の妙を楽しみたい。
2019/12/18
nobby
そうか…もう冒頭から示されてたんだね…ふとしたことからブログやSNSで交叉した〈色葉〉と〈ソラパパ〉の2人。他人も人それぞれだから、あまり深入りしない方が…と読んでたら、そら言わんこっちゃない!どちらも深みにハマっていくのが痛々しい…その評判から何かあるとアンテナ張り巡らせる中、終盤ある人物の何気ない通話時の様子を契機に反転しながら一気に繋がりだすのはお見事!幾重にも仕掛けられた事柄に気付きも衝撃もありながら、細かい伏線回収には驚かされる。そして全て読み終わっての感想は、呆れるほど腹が立ち、切なさも残る…
2020/03/03
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