ではまた、あの世で 回想の水木しげる
ではまた、あの世で 回想の水木しげる / 感想・レビュー
ホークス
2015年に亡くなった水木しげる氏へのオマージュ本。著者は自称水木原理主義者(私と同年)。マレーシアやメキシコに随行した。写真を撮る時は左腕のつけ根がクイっと動く、という癖の話に胸が詰まった。呉智英、南伸坊、古川益三(まんだらけ)、春風亭昇太らの水木論は様々だけど、逞しさと優しさに行き着く。偉大な解毒剤という言葉がピッタリ。自家中毒にはまりがちな日本人を救い続けてきた。自分の中の自然に従えと、今も天国で言ってる気がする。水木氏と同じ年に、著者は一人息子を亡くされたという。本書をよく書いてくださったと思う。
2021/01/26
たくのみ
「3人の鬼太郎作家」「ビンボーは自然現象」「一つの体に存在する二人の水木しげる」が面白かった。五期で萌えキャラになったネコ娘について、「お化けの中だから目立つんだよ」と関心なし。「夢というのは屁に似ていますな」こちらの期待をみごとにはずす受け答えが御大らしい。水木漫画のパロディ・ドリヤス工場や、講談の田辺一角、そして「水木菌に感染した」春風亭昇太。「水木山脈は明るく、水木しげるは永遠です」という水木原理主義者のゲゲゲ賛歌なのでした。
2016/04/27
nizimasu
水木しげる先生はガロを読んでいるとそこかしこに白土三平さんと並んでよく出てくる名前だった。当時はそこまで興味はわかなかったんだけど個人的なマーヴェルやSF、オカルトブームからこの水木ワールドに辿り着いてしまった次第。小さい頃はほとんど水木先生の創作かと思っていたら江戸時代からの文脈も取り入れつつそこには戦争体験や精霊の考え方などもある。80代になった時に自分が神に近づいたという死生観とかはとてもシンプルで東洋の宗教観ともつながっていて何とも微笑ましい。。背後にあるニヒリズムも素晴らしい
2016/10/28
禿童子
水木しげる没後の追悼本だが、著者の崇拝ぶりが熱く、深く、過去の雑誌掲載記事の焼き直しで繰り返しが目立つが、新発見もあって水木ファンは必見。世界各地の精霊・妖怪を探求する冒険旅行を水木と共に敢行したノンフィクションライターならではの観察が面白い。世界の妖怪が千体前後のカテゴリーに分けられてほぼ共通するという「妖怪千体」説は興味深い。鬼太郎は水木以外にも先行作家と同時期に描いた作者がいた話も詳しく述べられて目からウロコ!久しぶりに一気読みして鬱が散じた。ケッサクな水木の人間像は何度読んでも面白い。
2016/09/08
七峰らいが
発作的に買い読み終えた。先生の写真が貼られた帯を外すと一反木綿が現れる。「水木原理主義者」を名乗る著者のインタビュー記事や散文が、加筆訂正や書下ろしも交えてその「水木しげる像」を浮き彫りにする。章ごと(記事ごと)に繰り返される著者と水木先生との思い出話、そこに時折哲学的心理学的な研究の成果の一端が垣間見える。しかしまあ、「水木原理」の不条理さには舌を巻く。
2016/09/09
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