奇々耳草紙 祟り場 (竹書房文庫)
奇々耳草紙 祟り場 (竹書房文庫) / 感想・レビュー
夢追人009
怪談実話界の異才・我妻俊樹さんの本作は、いつもより現実的でぶっ壊れ具合が小さめ控え目ですので、少し残念でしたが、でも人間そんなに毎回の様に傑作を生みだせる訳もありませんから、まだ数多くある未読の作品集と今後の活躍に期待したいですね。けれど水準作ではあっても十分に面白いとは思いますよね。『俺が行く』近所の踏切で飛び込みがあった翌日、中学生の仲間で見物に行くと踏み切りの手前に黒い高級外車が停まっていて運転席から老女が彼らを呼んで言う。お若い皆さん方にお願いしたいの、もうすぐ警報機が鳴り遮断機が下りるでしょう。
2021/01/01
HANA
実話怪談集。内容こそ最近流行りの奇妙な事が起こった系なんだけど、この著者の場合その背後から漂い出してくる「得体の知れなさ」が半端ない。日常に裂け目が開く話は結構見かけるのだけど、そこから嫌なものが溢れ出してくるような話は滅多にお目にかかることが出来ない。本書にはそういう話が多量に含まれていて大満足。この著者に多い家族が壊れる話は「兄の塩」以外あまり無いんだけど、「先輩の家」や「物陰から顔」といった不条理系の話の怖さがそれを補って余りある程凄まじい。まあワニとかよくわからない話もいくつかあるんだけど……。
2016/03/28
夜間飛行
空き家に猿が棲みつく話や、回転ドアで大勢の子供が遊んでいる話など、どこが怖いというわけでもないのだけれど、情景が心にペタリと貼り付くように思えた。それからワニの話。ホテルのベットの下や造成地の土中から現れるワニは、動物の夢をよく見る私には気になる存在だ。又、知らないうちに薬箱に入ってるトマトや、煮豆の匂いのする隠れ里のような家…これらはいつ自分の身に起きてもふしぎではない。何の前触れもなく、鋭い刃物ですっと切れ目を入れるように私たちの日常に現れる怪異。一瞬遅れてふわっと怖さが湧いてくるような話が多かった。
2016/08/12
J7(読メ低浮上中)
前にも読んで、えげつない話を読んだと感想を書いた怪談作家・我妻俊樹さんの本。呪い、心霊、サイコ、実話系怪談の中に出てくる内容は、ある程度のカテゴリに分類できても、この人が書く現実のワンシーンに強烈な違和感が、無理矢理に挿入されるようなエピソード群は、他の怪談作家と比べてもやっぱり独特で異様な世界観だ。単なる不条理ともシュールと言い切るのとも違う。『先輩の家』『白いビデオテープ』『廃墟の警官』など、背景にどんな真相があろうと、表面に見える絵面が、わけがわからなすぎて、意味を想像するだけでも不快な気分になる。
2017/05/10
澤水月
複数のワニ怪談なんて初めて見た!飄々・軽妙と不可解・恐怖が両立する今様の内田百閒。目の前で見ているものや人間関係がぐらりと崩れる感覚はたまらない。人物や怪異を起こすものの発するコトバも独自の感覚でゾクゾク、ワニの発言?には脱力し、娘のくせに私の息子を××…は脊髄から捩れるおぞましさを感じる。外れなし。トマト、中間の話など奇妙極まる…
2016/03/05
感想・レビューをもっと見る