怪談売買録 拝み猫 (竹書房文庫)
怪談売買録 拝み猫 (竹書房文庫) / 感想・レビュー
夢追人009
大学祭や書店で実話怪談を一般の方に話してもらって拝観料100円をお支払いするという企画で聴取日時も克明に記録されていますので凄くライブ感覚がありますね。語りも本人の言葉をそのまま使われていて怪談を集めて回る場だからこそ起きるプチ怪異のオマケつきで飾らない素朴な味わいが新鮮でしたね。悲しみの中に一縷の希望を感じた話。『拝み猫』先祖代々、猫を飼う時は猫を抱きかかえて3周回らないといけないという決まりがある方の話で、母が田んぼ脇の水路で溺れかけてビイビイ鳴いていたのを助けた仔猫にビーちゃんと名付けて可愛がった。
2021/01/03
HANA
実話怪談集。以前からアンソロジーで気になっていた怪談売買所が一気に収録。学園祭等のイベントで客から聞いた話を紹介するという体なので、多々ある実話怪談とはまた違った生の迫力がある。著者が手を入れる前にある原石の輝きとでも言うべきか。話者と読者の距離が、他の実話怪談より遥かに近いようにも思えるし。話の前にあるプロフィールがそれに輪をかけているのかな。ともあれ怪談の内容としては平凡な内容のものもいくつかあったが、このスタイルだとそういったものにも独特の迫力が感じられる。兎に角臨場感というものを感じる事が出来た。
2016/11/18
ネムコ
実話怪談が一ジャンルを築いてどれくらい経つだろう。今、その書き手たちの一番の悩みはどうやって、誰から怖い話を採取するか、だろう。そこで登場するのが大学などのイベントに参加して、来場者から怪談を採取する「怪談売買」。このアイディアは黒木さんが先魁ではないそうですが、そうやって謂わば一般の方々から集めた話を編んだのがこの本。玉より石の方が多いのは想定内ですが、表題作は猫好きとしてはズキューン!ときますね。
2017/01/29
澤水月
上手い。様々な人が怪を語る口調を再現する一人称叙述が太宰治「駆け込み訴え」「皮膚と心」を想起させ流麗さにぞくぞくした。文体実験的でもあるのにすんなり読める凄腕。黒木さん小説作品も読みたい。特に「むかで」、最高。現代日本文学掌編傑作選があったら入るべき傑作。まさかのイモリ怪談と枝毛怪談は笑っちゃうけど怖い。死ぬのは良いぞ、予想裏切られ小気味いい。アチラヘ踏み入ってしまわれた女性も出てくるが、もしかすると先の震災が…と胸痛んだ。とにかく外れないのが素晴らしい
2016/11/01
田中
怪談売買所で収集した怪異譚である。体験者の不思議な話しがその語調のままくりだされるので間近で耳にしているようだ。なにげない普段の生活で遭った不可解さに臨場感がある。雀の亡骸があった「くるま」は妙に印象に残る話しだった。小さい少女になり変わった雀が知らせにきたとしか思えない。「コンタクト」は、虫の知らせのような体験。身内からの差し迫った意志の力が本人に影響を及ぼして行動に制御をかけてしまうのだろう。「拝み猫」は、可愛がっていた子猫と母親の愛情物語。胸が熱くなる切ない話しだ。【日本の夏は、やっぱり怪談】
2022/08/14
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