奇々耳草紙 憑き人 (竹書房文庫)
奇々耳草紙 憑き人 (竹書房文庫) / 感想・レビュー
夢追人009
我妻俊樹さんの実話怪談は信じるとか信じられないとか言うレベルを遥かに超えたSF落語の様な趣があって真剣に理由を考えたら頭が狂いそうになる危険を孕んでいますので要注意ですよ。でも本当にこんなにけったいな奇譚を書ける人は滅多にお目にかかれず正に唯一無二の稀有な才能だと思いますね。『髪の毛』三十代のフリーター女性から聞いた話で、風邪を引いて寝ているとスーツ姿の男が区役所から来たと言って訪ねて来る。隣の人の事を聞かれたので全く知らないと答えると男が困った様に頭を掻くと髪の毛がズレたので「カツラなんだな」と思った。
2020/12/27
HANA
実話怪談集。著者独特の怪談というか奇妙な話が今回も満載。やはりこの人の場合、読んでいると現実のフレームが歪んでいくような奇妙な読後感が味わえる。一件日常生活の延長なのに、ふとした切っ掛けでそれがボタンを掛け違えたかのような異物感に襲われるというか。特に「猫供養」など下手したら偶然の積み重なりなのに、その積み重ねが読者の頭の中で嫌悪感に変わっていくような。そういう意味での極北が「父親とドライブした山」とかかなあ。シリーズは本巻で終わるらしいが、この独特の雰囲気を持つ話をもっと続けてもらいたいものである。
2017/05/12
ラルル
相変わらずのナナメ45°の怪談は絶妙に面白い。そして毎度本編より面白いのがあとがきのナナメ33°の怪談。犬の話面白いね〜。シリーズ一区切りという事で、新しいのが始まる事に期待したいです
2017/07/31
澤水月
ロブスターとカラオケの衝撃に全て持ってかれた…!悪夢か現実かあわいが曖昧な著者の怪談群大好きなのでシリーズ終わるのが寂寥感…もっと読みたい…
2017/04/30
瓜坊
合理的には結び付かない事象と事象を結ぶその実線が実話怪談だとすると、筆者にとってこの本がシリーズの最後だからか、その実線が非常に力強い。最初の頃の怪談集のように曖昧で淡い線からの叙情、というよりは「普通に考えたら結びつかないんだから」という開き直りの力強さがある。実話怪談は筆者が限りなく存在を消して、語り手、語り手の知人、といった人間の話をそのまま綴る体が多いけれども、この「そのまま」が本当は誤謬であり、だからこそこの本では筆者以外の人間の「存在の確かさ」の怪しさが目立ちすぎることすらある。
2017/08/17
感想・レビューをもっと見る