二、三羽――十二、三羽
二、三羽――十二、三羽 / 感想・レビュー
井月 奎(いづき けい)
『二、三羽――十二、三羽』は随筆です。随筆と短い小説の隔てが書かれておらず「私」が鏡花とも書いてはいませんし、「家内」をすず、とも言ってはいないのです。小鳥を愛でる話で、小鳥やつれあいと遊ぶ様子は鳴き声と笑い声が聞こえるようです。鏡花の随筆と小説を隔てるのは、登場人物や読者、作者が逢魔ヶ時に入っているかどうかの別です。鏡花の小説は逢魔ヶ時の中に入り込み、体感する世界なのです。随筆はその世界の手前で覗き込んでいるのです。どちらにせよ鏡花のあの香気はたちこめています。私は一生鏡花の世界に彷徨うのでしょう。
2015/07/22
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