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十二月八日

十二月八日

十二月八日

作家
太宰治
出版社
青空文庫POD
発売日
2016-07-31
ISBN
9784802061612
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十二月八日 / 感想・レビュー

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夢追人009

太宰治さんの短編小説で、現実の奥さんが語る日記小説。題名が偶然今日だったという事もあり興味を魅かれ面白く読みました。私は著者について殆ど知りませんでしたが、ユーモアに理解のある方なのだと本編を読んで強く印象付けられましたね。本編は1941年の12月8日、日米開戦の日の庶民の貧しい家庭の反応が描かれておりまして4年後の敗戦の事など全く頭にない呑気で脳天気な浮かれ気分に満ちていますね。太宰治自身が作家として登場し、方向音痴の常識知らずで、つい最近まで北極が一番寒くて南極は一番熱いと思い込んで錯覚していました。

2022/12/08

アキ

NHKラジオ『高橋源一郎と読む「戦争の向こう側」』で紹介され、高橋源一郎著「ぼくらの戦争なんだぜ」にも載る。この小説は、昭和16年12月8日の一日の日記の体裁を取っている。真珠湾攻撃の日である。ラジオのニュウスを聞いた主婦が「嘘だけは書かないつもり」で書いたものだが、物書きの主人の「西太平洋とはサンフランシスコのあたりか」と真面目にずれているのが笑える。庶民の感覚はその程度だったのだろう。しかし最後闇の中家族を引き連れ「僕には信仰があるからついて来い」というのである。太宰は同年12月中にこの短編を書いた。

2022/08/23

えりか

ほんとは昨日読みたかった。太平洋戦争開戦日。太宰の妻目線の日記。太宰も妻もご近所さんも、なんだか呑気。当時日本が勝つと信じていて、深刻さは感じられない。日常の中で「戦争」よりも「隣組長」の仕事の方が大変だと思っている。そんな風に戦争が始まって、危機感もなにもなくて、怖いことだと今だから思う。それにしても太宰の女心の理解っぷりはほんとに感心する。娘を可愛がる妻がかわいい。微笑ましくなる一方で、やはり恐ろしさを感じる。

2016/12/09

ミエル

開戦となった昭和16年12月8日のある主婦の日記、という体裁をとった小品。作家の夫はラジオも買ってくれないので、隣近所のラジオからニュースから開戦の情報を仕入れる。ニュースから流れる戦火はまだまだ遠い世界のこと、躍進する日本軍に感傷的になってもそれは刹那的、主婦らしい思考がほんとに上手い。清酒の配給が少ない、幼子が最高に可愛い日常の強さ、その後の展開を知るものとしては、これがつかの間の幸せになる切なさが重い。それにしても夫はなぜラジオを買わないのか?まさか、軍部の情報統制に気づいているのか?深読みし過ぎ?

2021/10/13

ポテンヒット

「ぼくらの戦争なんだぜ」で紹介されていた。太宰はどのように検閲の網を掻い潜ったのか。話に出てくる妻も夫も太宰の分身のように感じる。十二月八日、東京はいつもと変わらない静けさだが、ラジオで流れる戦況や配給の酒の話は戦時の生活だ。そんな中で太宰のユーモアは、肩をいからせて一生懸命に突き進む日本へのアンチテーゼだ。ラジオでは勇ましい話ばかりだが、真の闇が待ち受けている事を予感していたのかもしれない。夫の言う信仰とは、文学または書くことの力だろうか。昭和17年2月初出の作品。

2022/12/22

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