運
運 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
芥川の作家活動初期に書かれた「王朝もの」の1篇。『今昔物語集』巻16第33話「貧女仕清水観音値盗人夫語 第卅三」を出典とする。芥川のプロットの中核部分、すなわち女が清水観音に参詣し願掛けをする以下はほぼ原話通りである。最も大きな違いは、そのエピソードを挟むように、前と後ろとに青侍と陶器師とのやりとりが描かれることにある。そして、その部分こそが芥川らしさの表出であり、芥川の真骨頂でもある。そして、古典から換骨奪胎して近代文学たらしめているのである。若く単純な青侍と清水の参詣路にあって、様々な人生を⇒
2023/01/03
choconaut
「塞翁が馬」。おふくろと死に別れ貧しくなった女は観音様の御告げに従い出会った男と結婚する。そして、不自由のない生活ができるようになったものの、同時に、物盗りの女房になり不運にも人殺しになった。この話を聞いた青侍は如何せん女が裕福になったことは仕合わせだと考えるが、翁はそう云う運を嫌だと言う。授かった運の善し悪し、畢竟、物事の善し悪しは一面的ではない。
2023/09/05
感想・レビューをもっと見る