殺人現場を歩く
殺人現場を歩く / 感想・レビュー
みずたま
凄惨な事件がごく普通の日常に潜んでいることが分かる。著名な18の事件の概要と現場の写真。淡々と綴られており遺族や関係者を追いかけ回して書かれたような事件ルポではない点が良い。2003年初版当時、未解決だった事件が今では迷宮入りし風化してきている。遺族の気持ちを思うと胸が痛む。
2015/01/23
ジョニーウォーカー
「事件が起きた現場に行く」という取材行為そのものに主眼を置くことで、これまでの犯罪ルポではちょっと味わえないほどの臨場感を読む者に与える。事件のあらましは最小限にとどめ、あくまで現場レポートに徹して書かれた本文は、現場周辺の風景をより不気味に浮き上がらせ、そこで起こった悲劇と惨劇をいやがうえにも想像させる。綾瀬女子高生コンクリート詰め殺人事件で被害者が監禁されていた場所は、なんと自分もよく知る住宅街に存在した。これまでテレビの中の出来事だった凶悪犯罪が、日常に潜む不安の種へと変わっていった。読友推薦本。
2011/03/18
Ted
「新宿西口バス放火事件」という古い事件が収められている。被害者が全身に火傷を負って路上を転げまわっているのに誰も助けようとしなかったらしく、それどころか『まだ中の人は生きてますか』と脳天気に聞いたり、写真を無頓着に撮る者もいたという。秋葉原事件の際に、写メを撮る野次馬を見て言いようのない嫌悪を覚えたが、昔は違った、ではなく30年前でも同じだったことに軽いショックを受けた。時代とか日本だからではなく、突然出来した事件に人は思考停止に陥り「限りなく無関心な傍観者」となるような一種の群集心理が働くのではないか。
2011/01/17
文也
乾いた雰囲気の一冊。作者が殺人現場を歩き、感じた事を率直に、緻密に綴っている印象。世田谷一家殺人事件の文章にはちょっと鳥肌がたった。何気ない風景に記憶された凶行。その事実は確かに惹かれてしまうものがあると、自分も思う。続巻もあるみたいなので読もうと思う。
2016/10/24
加藤久和
ある「場所」の持つ何らかの力が人間の精神に作用して殺人に赴かせるようなことがあるんだろうか。この本に登場する殺人関連現場の多くに共通しているのは、そこが人間同士の温かい感情の交流を排した場所だということ。昔ながらの共同体が破壊された後に作られた新興住宅街。都心の中でボコッと落ち込んだような死角的な空間。そこは「あらゆるものの距離感がつかめなくなり、身内の論理のみに埋没していく」場所である。この本はそれぞれの事件を深堀りするものではなく、著者が殺人の犯行現場を歩き心に浮かんだイメージを書き記したものだ。
2016/03/06
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