中国ジェンダー史研究入門
中国ジェンダー史研究入門 / 感想・レビュー
さとうしん
前近代の部分では、滋賀秀三の家族原理、すなわち漢から清まで不変の父系原理が存在していたという家族法理解に対し、それがあてはまるのは明清の一時期のみではないかと強い疑問を突きつけ、滋賀説に対する挑戦状のようになっている。近現代の部分でも人民公社の制度を女性の仕事と家庭生活の両立という面で肯定的に評価する一方、文革期にもてはやされた「鉄の娘」は男女平等を唱いながら男性基準に女性を同化させようとしたと批判するといった具合に、従来の評価の盲点を突いている。
2019/01/08
マカロニ マカロン
個人の感想です:B。『敦煌』読書会関連本。『敦煌』に二人の女性が出てくるが、何れも名がない。日本では菅原孝標娘のように女性の名前が残っていない。ところが中国では9世紀の詩妓・魚玄機のように個人名が残っている。この点でも『敦煌』は日本的な時代小説と感じた。本書は従来の中国史学会においてこれまで取り上げられてこなかった「ジェンダー」に関する研究をまとめている。先史時代には墳墓の副葬品に男女間の性差はあるが、男尊の傾向はみられない。しかし、新石器時代末期に至ると男系血縁集団中心の社会への変化が見受けられる。
2020/09/13
すいか
抑圧の歴史としてしか叙述されてこなかった中国の女性史を別の側面から分析という試みは既に取り組まれてきているが、現状におけるその成果が国内外に渡って網羅的に把握できる。法制度や儒学思想の分析から極端な貞節の強要など厳しう女性抑圧は明清期特に清代に入ってから顕著になったものであるとされる一方、文芸面では知識階級の女性や妓女たちの間で文学的才能を発揮する「才女」たちはむしろ明清期に活躍が顕著であるという考察があるのが興味深い。
2019/08/03
感想・レビューをもっと見る