無意識という物語―近代日本と「心」の行方―
無意識という物語―近代日本と「心」の行方― / 感想・レビュー
ハチアカデミー
新たな「心」の認知システムとして「無意識」を捉え、19~20C初頭の日本に於ける「心」イメージの変容を探る。近代が切り捨てた「不気味なもの」、人間の内面に宿る矛盾や不条理さ、理性では押さえつけられないもの(魂、精神)を、近代オカルティズムが掬い上げ、やがて精神医学における学術的根拠を持った「無意識」が肯定した、という前半の論考からは、当時のジャーナル/学問における「人の内面」観の変遷を追うことができる。後半は芥川を中心に、文学を「作者の「無意識」の産物」として考察。芥川の主に晩年の作品を探る。
2014/07/09
きつね
「心」をめぐる言説について、心理学や精神分析などの「学」が「超常現象」などを触媒にしつつやがて切りはなしていく過程が論じられる。小保方問題で久しぶりに話題にでた「千里眼事件」もその一例(『リング』の元ネタといったほうが有名か)。しかし、人々の「心」への関心が科学的に専門化された「学」的言説のみで満たされるわけではなく、そうした残余はときに「霊」言説として、ときに「神経病」言説として、あるいは「宗教」としてよみがえる。「無意識」何かを通して語りかける構造を意識的に変奏した芥川の作品を読解する第二部も面白い。
2014/08/05
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