闇のよぶ声 (ぶんか社文庫 え 4-3)
闇のよぶ声 (ぶんか社文庫 え 4-3) / 感想・レビュー
gushwell
自炊してiPhoneで再読。遠藤周作にしては珍しいミステリー小説。三人のいとこが謎の失踪し、次は自分なのかと不安にさいなまれる樹生。その彼のために、婚約者圭子が神経科医の会沢を訪ねてきますが、その後思わぬ展開が待っています。戦争中に行われた悲惨な出来事の復讐のために行われる恐ろしい犯罪が明るみになった時には、なんとも言えぬ暗い気持ちになります。ミステリー小説とは言え「ふかい海の底」のような心の闇を描いたこの作品は、他の遠藤周作の作品と同様いろんなことを考えさせられます。とても良い作品だと思います。
2015/06/20
hirayama46
遠藤周作のサスペンス風味の強い長編。いわゆるミステリ的な仕掛けはあまり為されていませんが、引き込まれる物語性はさすがに上手いです。動機まわりについてはここのところ読んでいる島田荘司の吉敷シリーズと存外近いものがあったような……。
2023/03/21
tae521
戦争の中でどれほどのむごいことが起きたのだろう。復讐のために綿密な計画を立て手を下さずに精神を追い詰めてゆく過程が恐ろしい。戦地で国のために戦った兵士たちも心に重石を抱えながら生きてきたのだろうと思う。精神科医会沢の飄々とした、それでいて関わる人たちをしっかりと受け止める姿勢が良い。集団的自衛権が日々取り沙汰される今、改めて戦争の傷跡をたどるべきなのだろう。
2014/05/14
bela
遠藤周作といえばキリスト教文学、ユーモア小説のイメージが強いが 今作は珍しく心理的探偵法を用いた推理小説。推理小説として読むとイマイチだけれども、登場人物の心理描写が丁寧に描かれていて カウンセラー受けてるようでお得な気分になれる。「実存するものは、すべて、理由なしに生まれ、弱さによって生きのび、出会いによって死んでいく」だそうです。
2012/05/21
のん
遠藤周作の唯一の長編推理小説なんだそう。推理小説というものは個人的に好かないのだけれど、この本はどうも読みやすくてさっくり読み終えてしまった。各登場人物たちがとても人間臭く描かれていて嫌悪感すら覚えるのだけれど、それと同時に愛おしさも感じるのだからふしぎだった。
2012/06/08
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