平成3年5月2日、後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺伸彦
平成3年5月2日、後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺伸彦 / 感想・レビュー
本の蟲
非常に長いタイトルだが本来は無題。芥川賞候補の表題作は、ハネネズミという空想上の動物の実験と絶滅を横書き、図表や写真入りのノンフィション風に描いたもの。他2編は通常の縦書きで、左面から読むと表題作。右面からなら他の短編を読み始めることができる珍しい綴じ方。表題作はハネネズミの死に向かっているとしか思えない生態を、遺伝子や細胞学の面から詳しく説明している。他2編も、医師にして東大講師の作者らしく、医療や手術についてリアルな描写で書かれたずしりと来る話。個体と種族全体の死について考えさせられる1冊。
2020/09/02
peeping hole
こんなザ・異常論文小説が筒井康隆大江健三郎に絶賛され芥川賞候補までのぼりつめていたのを柴田元幸に教わるまで知らなかった。全然関係ない家族の写真を図像連打するところで爆笑してしまった。チープさを遠ざけようと周到な論文文体やりながらラストでゴジラみたいになってて、それもやや手垢ついてるけどアガる。理系のTwitter的な(落合陽一みたいに)「。」ではなく「.」が用いられてるのがすごくよかった。羽ネズミのアップがなきゃこの手の論文としておかしいのだけれど、遠目から撮られた写真の実在感がガチっぽくて本当に怖い。
2021/03/17
ホレイシア
論文形式で語られる、光を放つ幻の動物ハネネズミ。文章、かなりいけますぜ。
2008/11/29
mEmO
ぼくらが「文学」とか「SF」とか言ってるものって、どういうジャンルなんだろうかなんてことを考えさせられますよね、こういうの読むと
2011/12/07
inugamix
表題作は科学論文体裁のリアルサイエンスフィクション。日本の端正な鼻行類。“ハネ”を持ち恋をすると光を放ちいまわのきわに涙を流すというファンタスティックな希少種のネズミが題材でありながら、体裁と描写のかっきりと学際的なことに脳が混乱し刺激される。参考文献と作者あとがきも故意にフィクションとして読んで楽しかった。「新化」の先行論文でもあるのでできれば先に読むといいです。
2009/12/17
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