狂人日記
狂人日記 / 感想・レビュー
猫丸
人間になり始めの頃は、じぶんと他人の関係を掴むのが非常に難しいはずだ。幼稚園くらいの頃、相手の方へ向かって歩くとき「今そっちに行くよ」と言うことは論理的におかしいと思っていた。聞く相手にとっては僕が「来る」のだから、それを予告するならば「僕が来るよ」と告げねばならぬ。しかしそのような言語の使用例は無いようだし。どうも他人との距離感がわからない。いまだにそれを引き摺っていると思う。ただ、今はそうした個人の内面における位相の異常は誰にでもあるものと確信している。それが甚だしくなると異常は外部化する。
2021/01/16
さっちも
何度読んでも、主人公の孤絶の濃さに圧倒され、胸が塞がれる思いがする。登場者の何気ない会話の一つ一つが深く、こんなにも、読後の自分への影響やダメージがある作品はない。
2018/04/23
吟遊
ぎりぎり昭和の本。すごいよね、ゆったりと迫る暖かみさえある迫力。どこかしら諦念。精神病を抱えた男女の、愛と許しなのか、それは語りだけで、結局のところ、世の流れの一部にすぎないエピソードなのか。
2016/01/12
ちゃこ
『君の病気は、多分、癒えてきているんだよ、前からそう思っていた、君が心身ともに健常者になったとき、還ってこなくなるだろうとね、それが自然さ、小鳥が巣立つようにだ、だから君は、生き方の変更を恥じることはないよ、なんにも負担に思うことはない、もし、許すという言葉が必要なのだったら、喜んで言う、許すよ、君に関して、なにもかも許したくてしようがないよ、自由におなり、今まで一度も、人にいうことがでいなかったが、心からそういいたいんだ。』生き方の変更、という言葉にぐさりときた。
2014/03/18
きりさめ
読んでいて胸が苦しくなり、最後の方は無意識に涙を流しながらページをめくっていた。それほどまでの圧倒的な心理描写。人とのつながりを求め、愛し、愛されたいと望んでも狂人の自分には叶わないと半ば諦めているもののやはり生きていく実感を得るためにはそのつながりを求めなければならない……真面目すぎるほど生きることに真剣になってしまったがための葛藤が切ない。この主人公は一体どうすれば救われることができるのだろうか?
2017/12/17
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