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最終上映

最終上映

最終上映

作家
石黒 逹昌
出版社
ベネッセコーポレーション
発売日
1991-03-01
ISBN
9784828823720
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最終上映 / 感想・レビュー

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ホレイシア

文章、大好き。表題作は静かな雨音と古い建物の匂いが感じられる。同時収録作は癌の症状が克明に描かれているので、苦手な方は注意。

2008/11/29

inugamix

癌の告知と壮絶な治療や医療行為と死を巡る医師の心理などを、硬質な文体と湿り気を廃した描写で淡々と綴る。寝たきりに近い患者とその主治医の物語で、わかりやすいドラマや大きな動きはないのに、心理の綾と細かなエピソードで飽きずに読ませる。微妙な友人でもある患者、微妙な恋人でもある患者をめぐる心理が、また静かにひそかにぐっとくる。文学だ。「ステージ」は非エンタメ系リアルスプラッタでもあり、まざまざと描かれる人体解剖や臨終の様子もさることながら、何故か硬膜下麻酔のくだりが最も冷や汗をかいた。

2009/12/19

warimachi

この透明感。読んでて感傷的な気分になるのはこちらが感傷的な人間だからなんだろうけど、どっちかというと「泣きました!」みたいな感想は嫌がるタイプの作品でしょう。

海宇未悠(うみゅみゅ☆)

はぁ……。天才……。 短編『最終上映』と中編『ステージ』の2篇が収録されている。どちらも主人公は医師で、『最終上映』は大学時代の友人、『ステージ』は元カノ。どちらも担当医として癌患者になった相手を回想するお話、と言ってしまえば泣き小説と思われるかも?そんな簡単な話しじゃなかった。特に、『ステージ』では、医師でもあった元カノの壊れていく様が怖い。その上、解剖の描写がエグいほどリアル……作者の経験が含まれるであろう事を知っているから、だけではないと思う。苦手な人は無理だろうけど、とにかく凄かった。

2022/05/22

ぼっせぃー

医師はキャリア最初期の研修医時代に、初めて立つ生死の現場で、同時に量的ハードワークも課されることになる。人があらゆる形の苦しみの中亡くなっていくのを目にし、進行的に死への恐れの性質が変容していくのを、朦朧とする意識の中で感じていたあの頃の自分の様を、記憶の抽斗を強制的に開いて記述されているように感じた。収録作には予定された死に対し突発的な外因死が挿入されるというモチーフが共通するが、これが一種の救いとも取れてしまう感覚は、目の前で肉体的、実存的に苦しみ抜いた人を見送ることで生じてくる実感に違いないと思う。

2021/01/19

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