電話男 (福武文庫 こ 101)
電話男 (福武文庫 こ 101) / 感想・レビュー
メタボン
☆☆☆☆★ 約30年ぶりに再読。利用頻度がすっかり少なくなった家庭での「固定電話」を題材にしているが、不思議と今でも全く色褪せない。インターネット社会におけるコミュニケーションとは、というテーマで語られる向きもあるが、ここは純粋に小説をスカスカなコトバで解体しようとするポストモダンの文学と受け止めたいと思う。表題作、UFO研究会のくだりは蛇足に感じた。電話男の存在だけで十分。「純愛伝」、電話女となる妻との最後の電話での交流がすごくせつない。この寂しさはいったい何だろう。
2016/02/24
九鳥
書かれてから四半世紀が経ち、インターネットが浸透した今の時代に読んでもビックリするほど斬新。知恵派と感覚派のコミュニケーション闘争に、「電話男」「UFO研究会」というふざけた名前を与え、澄ました顔で神話じみた大法螺を吹く。バカバカしいほど壮大で、かつ矮小で、誇張的、寓意的、羅列的、無意味的、空想的、知的な言葉遊びに紛れ込んだ、一分の真実。併録の「純愛伝」にはうっかり感動すらしてしまった。
2009/08/06
Yu。
求める者には癒しの手を… 掛け手の心の拠り所として存在する現代の堕天使“電話男”の光と闇から生まれる様々なテーマがシュールなまでの哲学的表現から描き出されていく「電話男」‥ そんな“彼”いや彼らの活躍の裏側から覗ける人間ドラマがなんとも形容し難い感動劇を作り出す「純愛伝」‥ といった二話から成る恭二ワールド。
2016/09/21
つゆき
この著者の作品は心地よいテンポで読めるのがいい。不意を衝く言葉遊びの嵐に笑った。まさかの声だし笑い。笑いすぎて読むのを中断した。まじめに読むほど笑えるという不思議な作品。「純愛伝」も収録されており、電話男とリンクしている話なので併読できて良かった。電話男・・・・・すごいシュール。
2009/09/28
猫丸
デビュー作をいまどき再読。リリカルな律動をもくろんで考え抜かれた意識的改行とともに、しょーもないギャグを交えた、現代余裕派宣言たりうる生新な作である。未だwebなき時代、人々の繋がりを電話というテクノロジーに仮託して寓意の詩を紡いでみせた。これもまた小説であった。余りある叙情を理知的な外見でコーティングする抑制が小林恭二の真骨頂であろうが、僕の方で継続的に著作を追う時間をなくしてしまったので近作まで手が届いていない。うまくいけば漱石に迫ることもできたかもしれない資質であったのだが…。
2020/05/11
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