完璧な病室 (福武文庫 お 1001)
完璧な病室 (福武文庫 お 1001) / 感想・レビュー
あんこ
再読。今回は古本屋で手に入れた90年代発刊の福武文庫版。デビュー間もない頃の小川作品は、荒削りながらもわたしを現実の近くにありながら圧倒的に遠い場所に連れて行く。そしてその荒削りささえも嫌いではない。「完璧な病室」には「シュガー・タイム」や「妊娠カレンダー」に見られるような食欲に対する異常さが垣間見える。最も生きることに近しい食というものが空恐ろしくなる。小川さんの描く日常の慣れと、その慣れを飛び越えて現実に立ち止まってしまう曖昧さは、圧巻。
2015/10/04
kankoto
福武文庫。「完璧な病室」「揚羽蝶が壊れる時」収録。官能的でグロテスクででも透明感のある感じ、人の体、物事が細部に描かれカタログ的な、標本的な描写、もう最初から小川作品なのでした(当たり前ですが)主人公の思考が夢想的で、自身の体の描かれ方が素晴らしかった。 死にゆく弟と過ごした時間を描いた「完璧な病室」はとても美しい童話のように感じた。次々と近しい人を失ってゆく主人公の悲しみ。雪の日に誰もいない病室でただ吃音の意志に抱きしめてもらうことによって彼女はその恐怖感から少し解放されたのかもしれない。
2022/08/17
ロッキーのパパ
デビュー間もない作品のせいか、文章はちょっと硬めな感じがする。デモ、物語は小川洋子らしい感じが出ている。収録されている2つの作品とも、生物として生きることの執着心のなさが印象的だった。それに、最近の作品と比べて、女性の「性」が強烈に感じられた。
2011/05/14
祐紀
例えば全てが不確かだとして、その中で確かだと思うのは阿呆だろうか。私の感覚が正常だと、いったい誰が証明できるだろうか。
2010/02/01
Madeleine
弱りゆく弟が唯一口に出来る、みずみずしい葡萄が妙に官能的。
2009/08/22
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