余白の愛 (福武文庫 お 1003)
余白の愛 (福武文庫 お 1003) / 感想・レビュー
kaizen@名古屋de朝活読書会
F耳鼻咽喉科病院と隣りのホテルが最初の舞台。主人公が突発性難聴になる話が、有川浩の「レインツリーの国」以外にあることを知りました。解説 柘植光彦(専修大学名誉教授)。博物館でベートーベンの補聴器の記憶の話題があり、「博士の愛した数式」における記憶との重なりから、著者が記憶に拘る作家だということが分かりました。
2013/06/11
メタボン
☆☆☆☆ 通読したあとでタイトルが絶妙だなと思った。記憶を宿す耳とそれを物語としてほぐしていく指。Yはすごく透明な存在だと思ったら、そうか幻想だったのか。私の胸に感じていた指の感触、そして現実に帰ったときの指の不在。ベートーベンの補聴器や、バイオリン(それ自体何となしに耳の形状を想起させる)、20時に香るジャスミンの花、今は無き温かな缶詰のスープ、こういった小道具の使い方もうまい。小川洋子の世界観がたまらなく良い。
2018/02/03
うりこ
1991年(福武文庫) 夫との別れ、耳の病、耳鳴り、F耳鼻咽喉科病院、座談会、速記者Yの指、甥のヒロ、13歳の少年、バイオリン、古い館、バルコニーから落ちた少年、取り壊されたバルコニー、ジャスミンの香り、ベートーベンの補聴器、雪、誕生日、ガラス製のペーパーウエイト、調合された香水、速記の紙、行き着かないバス、三目盛りの水薬・・・記憶の捻れ、捩れ、ダメージ、そして死と生が静かに白く。Yが十本の指を月にかざしてじっとみていた、その姿が胸に残った。抱いていた指が残した空洞にも。じわじわと哀しく、美しい物語。
2021/04/03
upiupi03
友達が『ジャスミンアールグレイ』のティーパックと共に貸してくれました。なんて粋な計らい! 平々凡々・俗物の私にはストーリーを完全には理解できない… が、小川洋子さんの世界観を感じることはできる!静かで少し官能的で優しいお話でした。ディティールにこだわりを感じる。 読み終えてから、すぐにパラパラと確認したり、軽く読み直したり。題名や表紙も含めてステキな小説でした。
2017/12/28
runorio
みみずくの涙はさらさらしていて、塩分が少なめで、乾きが早いんだ。その涙をシネラリアの葉に染み込ませて磨くんだ。顎の内側に耳を二つ重ねてそこにヴァイオリンを挟む。静まり返った表現は健在で、特に耳について突き詰めた本作においての静けさに圧倒される。
2011/01/30
感想・レビューをもっと見る