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くもの巣の小道

くもの巣の小道

くもの巣の小道

作家
イタロ・カルヴィーノ
米川良夫
出版社
ベネッセコーポレーション
発売日
1990-10-01
ISBN
9784828840109
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くもの巣の小道 / 感想・レビュー

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ピンからみたらパルチザンの兵士も居酒屋の常連も違いはなく、自分に部外者の気分を味あわせるだけの存在でしかない。ただの「得体のしれない別種の連中」だ。人はご大層な理念やスローガンのためではなく、「だれもが傷を抱えて、それを贖うために闘っている」。得意の歌と毒舌とおどけでマスコット的に揶揄われるピンだからこそ、子供にも大人にもなじめない孤独の相が際立つ。仲間外れにされ、ひとり隼を森にうめに行かされるシーンが鮮やか。

2021/03/19

lico

【第36回海外作品読書会(4月10&11日)】訳者のあとがきから見えてくることは、この小説がまず何よりも、国家が二つに別れ、どちらにつくかは偶然の産物でしかなかったという経験を持っていた当時のイタリア人に向けて書かれた作品であるということ。現代の日本人と当時のイタリア人とでは、この小説から受ける衝撃にはかなり大きな開きがあると思われる。そういう意味ではあえて今さら読む意味は低いかなと思った。 ただし、曖昧に物語を進め、読者に考えさせる手法はカルヴィーノらしさが満点で、彼の作品が好きなら読む価値がある。

2015/04/12

ケンサン

娼婦の姉リーナを持つ主人公、シニカルで自由奔放な少年ピン。姉のもとに通うドイツ兵からピストルを盗み、パルチザン部隊の一員に。病気だと宣うニヒリストの隊長ドリット、元船コックで過激派の食糧係マンチーノ、ガンマニアで元黒シャツ隊員のペッレ、冒険漫画の発想に冒される少年機械工ルーポ・ロッソ、女嫌いの憂鬱に捉われるも一人死に立ち向かう巨人クジーノ、等々吹き溜まりの集まり。自分が何のために戦っているのかもわからず無惨に死んでゆく無惨さは敵も味方もない。単なる英雄譚ではない、無益な戦争への虚しさを感じ得ない。

2024/08/17

龍國竣/リュウゴク

「ここは魔法の場所なんだ。いつだって、きっと魔法の願いが叶うんだ。それにまた、ピストルも魔法の品なんだ、妖精の杖と同じだ」(p.210)。少年の瑞々しい感性をもって綴られる作品には、パルチザン部隊の悲惨さは最早なく、生き生きと描き切られている。

2014/04/12

pippi

「ネオ・レアリズム小説の傑作」と解説されている。読後に「傑作」感は起こらなかった。文学史に通じてないと感受できないのだろうか?内容としては、少年ピンの視線で描かれた大部分は面白く読めた。しかしどうしてこうイタリア少年は機転が利き嘘八百の口達者なんだろう。現実を飛び越える力を神様から与えられてるようだ。ただ成長とと引換に美しい飛翔力は重力となり、周囲は地にはりついた現実だらけになっていくのだろう。パルチザンの面々のように。

2012/07/12

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