冬の龍 (福音館創作童話シリーズ)
冬の龍 (福音館創作童話シリーズ) / 感想・レビュー
鮎
読み始めてすぐ、これは男の子版「十一月の扉」だと思った。親元を離れてひとり下宿屋〈九月館〉に暮らす、十二歳のシゲル。父親とのわだかまりがあり、一癖ある下宿人たちとの交流があり、大家のおばさんとの絆がある。そして何より、ケヤキの化身・小槻二郎と雷の玉を巡る探索劇が地味ながら楽しい。シゲルの置かれた状況はなかなか厳しく、片親で息子を育てる私はどうしてもそこにわが子を重ね、息苦しくなる処もあった。けれども全体に読み味は易しく、書き込みすぎない心理劇もバランスよく読了できた。なんとも樹らしい小槻二郎の存在感よ。
2019/04/09
糸車
5月の「子供の本の読書会」の課題本。ずっしり内容が詰まったお話で面白かった。小学生の息子をひとり下宿に置いていく父ってどうなんだろうとまず思った。でも父なりに考えた末だったんだろうとは思うんだけど。下宿に住んでいる大人たちにもそれぞれの事情があって、不思議なつながりで手づまりな状況から一歩踏み出せるようになっていく様子がよかった。主人公のシゲルは似たような目にあっている子供は日本にいったいどれくらいいるんだろうと考えを巡らせる子。世界中で自分が一番不幸とは思わないのね。それだけですごくいい素質だと思う。
2014/05/16
遠い日
昔ながらの下宿屋、九月館にひとり暮らす12歳のシゲル。父は仕事を求めて故郷に帰った。管理人のおばさんは面倒見のいい江戸っ子気質。まもなく正月を迎える前の不思議な8日間の物語だ。ケヤキの化身、龍、雷の玉、キーワードとモチーフが、うねりのある話に深みを加える。下宿先の人々との関わり、雄治と哲との友情と絆が伝説の玉探しに絡んでいく。寒風吹く年の瀬の市ヶ谷あたりの今と昔が交錯し、歴史が透けて見えるのもいい。
2019/05/10
バジルの葉っぱ
古書店のことや、古籍の記述にある言い伝え、早稲田、市ヶ谷の町の様子などがちりばめられていて(地図でみたら町名や寺社名はほとんど実在しているものでした!)、児童書ですが大人の私でも読後の満足感のあるお話でした。ただ一見、表紙や題名が地味なので、最近の子供たちには手にとって貰いづらいのでは…とちょっと懸念してしまいました。大人が「これ面白かったよ〜」と子供たちに紹介してあげるとよいのかもしれませんね…。
2009/12/16
lemon tea
3人の男の子や下宿の人達など人物がうまく描き分けられていて読みやすかったです。二郎は最後まで謎のような感じで不思議な余韻が残りました。面白かったです。
2009/12/18
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