アリになった数学者 (たくさんのふしぎ傑作集)
アリになった数学者 (たくさんのふしぎ傑作集) / 感想・レビュー
鉄之助
大人にこそ読んでほしい、と強く思える絵本だった。「在野で数学の世界を探求する」(プロフィルから)森田真生ならではの味わい深い文章。その文章から、よくこの絵を描いたものだ、と思わせるテキスタイルデザイナー脇阪克二の力量にも感服。算数と違って「数学」とは、数や図形がそもそもどのようなものかを、考え感じることだ、という。「アリがエサをわけあうように、数学者は、発見をわかちあう」。心にグサッと突き刺さった。その発見を人に伝え、感動を共有する喜びもまた格別だ、とも言う。感性のアンテナを磨くに最適の絵本だった。
2024/04/14
☆よいこ
分類410。数学哲学。アリに転生した数学者の思考「数学」とは、数や図形を使うだけではない。「数や図形がそもそもどういうものか」を考える。数学者は、存在しないものについて研究している▽数学者のアリはアリにアスパラの数を数えさせようと話しかける。だけどアリは目の前のアスパラしか見ない。数学者のアリはやりきれない。だけど朝露のしずくの中にはあざやかな光があふれていた。大きなアリは「わたしたちの数は、人間の知っている数とはちがう」という。おなじ「1」にも色や輝きや動きがある。人間が知っている数も変化しつづけている
2023/12/07
キジネコ
数・数字そして図形。そもそも数学とは?それを探究する数学者とは?先ず理屈の解体ありき、例えばアリにとって、それは「どの様であろうか?」と考えてみる。働きアリにとって?そして女王アリにとって?概念としてある数と図形は目に見えないと云われて「なる程」と改めて思う。計量する行為を求める心的要因、感情の所在を内観する禅や老荘の教えまで沈降してみる愉快、以前読んだ「像の時間ネズミの時間」が教えてくれた生命のサイズによって違うアラユル事象の意味合いを、再び問い学ぶ。天空より降る雨粒の一滴、アリにとっての禍福や如何?
2019/04/09
がらくたどん
数学分野の研究者である著者の児童向け図書。頭の片隅に「不思議」の種を蒔いてくれそうな誠実な1冊。先日新聞で著者の万物との自覚的な相互依存をテーマとした論評を読んで手に取る。ある日ヒトの意識を残したままアリの身体になった数学者がアリが見ている「数」の世界を体験する。アリの身体にとっては朝露の一粒が膨大な情報と環境要因を持つ。「地上にあるものはすべて、たがいをてらしあって存在している」という女王アリの示唆が「1」という数を無機質なイメージから「生きている」数というイメージへと誘う。まさに「たくさんのふしぎ」
2022/01/18
やいっち
「数学する身体」の著者の本ということで、出版を知って即日予約ゲット。絵本だったとは。我輩には、童話や絵本を楽しむ柔らかな感性は乏しい。ファンタジーも敬遠しがち。頭が堅いのである(物理的に…じゃなく。頭が悪い…とは自分では認めたくない)。小一の頃、担任の先生に、10から1まで逆に言えと言われた。クラスの大概の子は出来たが、我輩は出来ず、教室の後ろに立たされた。水の入ったバケツを持たされて。10から9、9から8までは何とか言えたかな。7近くなると、頭はボーとしてきていた。チコちゃんの言う意味じゃなく(続く)
2019/06/24
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