普及版 ハイラム・ホリデーの大冒険 上
普及版 ハイラム・ホリデーの大冒険 上 / 感想・レビュー
くたくた
東江一紀さんの翻訳しかも児童書、ということで目についた、ポール・ギャリコ1939年の作品です。当時のヨーロッパの危機感を米国に伝える役目を果たせたのかどうかは判りませんが、1938年、ミュンヘン会談前後のナチスの暗雲が広がりつつあるヨーロッパの不安と喧噪を伝えます。主人公ハイラム氏は小太り丸眼鏡の冴えない中年アメリカ人。しかしその内実は、冒険心と正義感と騎士道精神が溢れかえった情熱で煮えたぎるロマンチスト。真っ向から冒険に飛び込み、セミプロレベルに鍛えに鍛えたフェンシングと射撃とボクシングと柔道で人助け。
2022/01/10
kuragemaru
表紙の絵やタイトルから児童向けの楽しい冒険小説を予想して読むと、思ったよりハードでビターな内容に驚かされます。大戦勃発直下の激動のヨーロッパを舞台に、アメリカ人の新聞記者ホリデーが陰謀に巻き込まれます。『水晶の夜』で出会ったイルムガルデとの恋、彼女の愛人グルンツェ博士(ゲッペルスがモデルと思われる)に仕掛けられた罠とその顛末あたりが圧巻。この戦争をどこか他人事として見ているアメリカ。ホリデー自身もヨーロッパに旅しなければそうだったのでしょう。この作品が大戦前に書かれたことに驚きを禁じえません。
2022/12/18
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