女に: 谷川俊太郎詩集
女に: 谷川俊太郎詩集 / 感想・レビュー
寛生
【図書館】未来完了形のような時間の感覚で書かれたような気がする。読んで来た谷川の詩とは、少し違う時間の感覚。私という命が、産道から出てくる前の時の流れが、雷が鳴り、風が大地の木々の間を吹き抜ける動きによって、闇から光へと蠢いていく。暗い子宮から「光のほうへ進んできたとき」と詩人は謳うが、時にはそれは過酷な試練でもある。そして、誰かによって、〈私の名前〉も与えられ、命は死と和解しながら生きていく覚悟をする。勿論、私と他者の体も魂も触れ合う。佐野洋子さんの絵はピカソが描く母像やシャガールの線を感じさせる。
2014/06/02
はやしま
佐野洋子さんの絵本を読んだのをきっかけに久しぶりに手に取った。帯に「生まれる前から ふたりは知り合っていた 死んだ後も ふたりは別れない」とあるように、生まれる前の様子から未来も離れないという物語が36編の詩で綴られ、各々に佐野さんのエッチングが添えられている。ふたりが結婚したのが90年、出版が91年。当時は(大人の恋愛だなぁ)と憧れを持って読んだ。詩の内容と絵の雰囲気からジョンとヨーコのようだとも感じた。残念ながら二人の未来は詩のようにはならなかったけど、作品はいつまでも残って欲しい。
2016/01/20
なつき
じわじわと深いところまで到達していくような詩。時折エロやかに時々無邪気に、文字と絵が愛をささやきあっているようだ。
2012/09/27
仮名
愛の詩、ということになるのだろうが、「未生」から「後生」まで、ひとりの女のいのちを辿るかのようなこの詩集からは、単に一語で表される「愛」よりももっと深く生々しいものが描かれている気がする。どれも数行の短詩なのに、あとに残すイメージは長い物語の一章のようだ。佐野洋子さんの絵も古代の壁画のような時空をまたいだ肉感がある。生々しいのに、同時に生身を離れたような遠い味わいが、行間と余白から湧いて出てくるのが不思議だ。
2012/07/11
おはなし会 芽ぶっく
今江祥智さんの『はじまり はじまりー絵本劇場へようこそ』で紹介されていた本。谷川俊太郎さん、佐野洋子さん元ご夫婦合作の詩集。お二人は出会い結婚し離婚したのですが、この詩集は出会いから結婚までの時代が書かれているそうです。生まれてから出会い死ぬまでの男女の愛が36編書かれています。
2020/04/06
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