ハルモニア
ハルモニア / 感想・レビュー
クリママ
子供のころの脳手術の後遺症で、感情の発露も言葉も失った女性に与えられた音楽の才能。彼女にチェロを教えることになった青年との物語。サヴァン症候群を想像し、その才能の開花を期待したが、ハルモニアを求めるあまり、物語はオカルトのほうに進んでいってしまうのが残念だ。読ませる力は篠田節子だが、内容はいつもの綿密な取材に裏打ちされた作品とは雰囲気が違うように思った。
2019/01/14
James Hayashi
サヴァン症候群という病状を持つ女性が弾くチェロ。彼女は絶対音感を持ち音楽性に長けているが普通の生活はできず施設に入れられている。その特異性にしばし驚かされながら読み進めた。テレパシーという摩訶不思議な要素あり、誘拐というサスペンスあり、億単位の楽器を奏でる音楽性あり、最期まで飽きさせない。直木賞直後の作品というが、ハルモニアという芸術への昇華を成し遂げた優れた作品だと思う。
2019/11/25
Mayu
臨床心理士の深谷から頼まれ、チェロ演奏者の東野は由希にチェロの演奏を教え始める。音楽家の考える人の幸せや音楽に対する価値観と、臨床心理士の考える其れ等は異なり、また由希にとっての幸せは?物言えぬ方の人権を考えさせられる。私は音楽家の拘りは分からないものの、東野の思考の方が受け入れやすかった。しかし、ここ最近読む臨床心理士は、とても頼りなく思う。そういう物なのかな。臨床心理士がちゃんと役割を果たしている本があるなら読んでみたい。冒頭の描写が取っつきにくかった。もう少し由希の描写が欲しかったです。
2019/02/17
キムチ
ボリュームある内容だ、質量ともに。篠田氏はひたすら東野、深谷、中沢・・そして由紀を描き切っている。非審判的感覚で。 読み始めて、何とも言えない嫌悪感を感じ、好き嫌いがはっきり出そうな内容と感じた。 ハルモニア・・調和と云う意味。これは暗喩的に何を伝えんとするか? 音楽原論はもとより、倫理観、福祉概念更にはマスコミの功罪等々山盛り突き付けて、展開していく。予測されるように、最後はダークなものへ突き進む。その原因、責任は?を考える事は払拭されている感じ。
2013/06/01
調布ヶ丘ダンスダンスレボリューション
チェロの講師をしている東野は精神障害者の社会復帰施設「泉の里」で、圧倒的な音楽の才能を持つがコミュニケーション能力を持たない由希にチェロを教えることになる。恋愛的な関係になるわけではないが、この二人の男女が「音楽のセンス」と「人間らしい感情」というお互いの持たないものを通じて心を通わせていく。若干男が一方的に入れ込んでる感はあるが、それを含めた人間模様とその行き着く先になんとも言えない切なさがある。ただ個人的には中盤以降由希が発揮する負の力という設定はいらなかったかな。
2017/04/04
感想・レビューをもっと見る