長崎くんの指
長崎くんの指 / 感想・レビュー
chimako
不思議。森見登美彦の『夜行』を読み終えたばかりで、また不意に人がいなくなってしまうお話。いるはずの人がいない、いないはずの人がいる。曖昧な記憶の中で確かに覚えている場所。今はもう閉園してしまった遊園地「コキリコ・ピクニックランド」をアクセントにした連作集。最初と最後に「長崎くん」登場。その他の登場者もとらえどころがない。長崎くんを筆頭に記憶喪失の行倒れやバタフライガーデンの研究員。それぞれが半透明で実感に欠ける。こんな浮遊感のある読書は嫌いではない、東直子さんまた読むなと思いながら本を閉じた。
2016/12/09
夏
コキリコ・ピクニックランドで働く人や、そこに関わる人の、6篇の短編集。最初はその世界観に入り込めなかったけれど、3篇目の「アマレット」がとっても良くて、そこからこの小説をおもしろいと思えるようになった。不思議で幻想的なお話たち。東直子さんの歌集も小説も読んだことがないけれど、他のものも不思議で幻想的なのだろうか。このお話の幻想的な部分が、わたしはとっても好きだった。とにかく「アマレット」は本当に本当におすすめなので、それだけでも読んでほしい。★★★★☆
2023/09/02
カニ
『言葉でないものが、いいんですよ。毎日、毎日、家でも仕事場でもいろんな言葉があられみたいにぶつかってくるでしょう。もうずいぶん慣れました。慣れましたが、傷つくこともありますよ。生身ですからね。でも花や蝶は、だまってきれいなものを見せてくれる。心を動かしてくれる。今のあなたの表情には、同じものを感じたんです』歌人“東直子”さんのデビュー小説集です♪「とりつくしま」を読んで以来、気になる作家さんの1人ですが・・・さらに他の作品も読んでみたくなりました☆
2017/06/19
林 一歩
裏ぶれたレジャー施設を縦軸にした歪んだ浮遊感のある連作短編集。好みは分かれるところか。
2014/06/28
horihori【レビューがたまって追っつかない】
さびれた遊園地を中心に繰り広げられる連作短編6編+1編。「長崎くんの指」「バタフライガーデン」「アマレット」「道ばたさん」「横穴式」「長崎くんの今」「夕暮れのひなたの国―あとがきにかえて」はかないものや、はかなくてすぐに消えてしまう、でも美しい時間や場所をぎゅっと凝縮したような、そんな話。歌人なだけに、独特の言い回しと、使われている言葉がきれいだった。 「うかうかしてないと人を好きになれない。」 「いつもきりきりしてたら、幸せになれない。」
2008/04/12
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