ハケンアニメ! (マガジンハウス文庫)
ハケンアニメ! (マガジンハウス文庫) / 感想・レビュー
さてさて
『巧い、と思う。悔しい。羨ましく、そして、どうしようもないくらい興奮する』。そんな傑作と呼ばれる作品が誕生する様を見るこの作品。そこには、アニメの制作に人生の全てをかけて真摯に向き合う人達の生き様が描かれていました。“お仕事小説”として普段見ることのできないアニメの制作の舞台裏を知ることのできるこの作品。辻村さんの作品作りの王道を行くように、緻密な伏線の数々と怒涛の伏線回収にカタルシスを感じるこの作品。名作、傑作の山しかない辻村さんの作品群の中に、また確かな傑作の頂を見つけた、圧巻の素晴らしい作品でした。
2022/08/31
パトラッシュ
誰もが「好きなことを仕事にしたい」と望むが、そうできる人は少ない。大部分は意に沿わぬ場で働くか、意志もなく流されて生きている。その針の穴の可能性を潜り抜けて大好きなアニメ制作に携わる面々を描いた群像劇は、単純なお仕事小説にはない希望に満ちている。芸術家気質の監督や無茶ぶりを強いるスポンサーに振り回されるプロデューサー、ノルマを抱えたアニメーターと聖地巡礼の実現に奔走する公務員などはプロレタリア文学になりかねないが、彼らは愛するアニメのため懸命に働き達成感を得る。働く苦労が報われる姿こそ本書のテーマだろう。
2022/01/08
みも
第一章は王子千晴監督と有科香屋子プロデューサー編。第二章は斎藤瞳監督と行城理プロデューサー編。第三章はアニメーター並澤和奈と新潟県選永市観光課の宗森周平編。六者六様の個性を端的なまでに明確化し、全員の力が結集した時の化学反応を描いた。ただ、そこかしこに美男・美女が登場し、良くも悪くも二次元的ライト作品。アニメに関し浅学の僕にはピンとこない描写が多々あったが、自分のテリトリーに固執する和奈に対し、誠実に胸襟を開く公務員の宗森には心を寄せる事が出来た。舟流しの祭りに集約される総動員のクライマックスは悪くない。
2021/05/07
NADIA
「アニメは好き?」と聞かれたら、同世代の平均よりは好きな方だと思うが、ツタヤでDVDを借りる程ではない。そんな私でも、この物語を読みながら何度も感動で目頭が熱くなるくらい感動した。テレビ放映されるアニメ作品制作者目線の第1章第2章も面白いが、一人のアニメーターが作品の舞台である地元の公務員と協力して「聖地巡礼」を企画する第3章が一番印象深く面白い。有川浩「県庁おもてなし課」を思い出した。第1章で垣間見たアニメ界の大人の事情が語られる場面では、子供の頃にある作品に感じた不満な部分を思い出し苦笑(^^;
2019/01/31
どんふぁん
2019年10月12日読了。ハケンアニメの意味もわからないまま、アニメに関する知識も全くないのに、読み始めた本作。ただ、辻村深月さんの「かがみの孤城」が素晴らしかったので、別の作品も読もうと思って手に取りました。アニメは普段全く見ませんが、自由に作品を描けて独自の視点と世界を持ってるものというイメージがあるんですが、監督になるとこんなに作品に対して責任を負わされるものなんだなと知りました。たくさんの担当を束ねて作品を作るから、失敗した時の重圧はすごいんだろうなと。今回は世間の評価は単純な形ではなかったけど
2019/10/12
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