私の家では何も起こらない (幽BOOKS)
私の家では何も起こらない (幽BOOKS) / 感想・レビュー
さてさて
人によって何を怖いと感じるかは異なります。それまで生きてきた中での経験の積み重ねが、その人にとっての怖さを形作っていきます。『あたししかいないのに、淋しい感じがしないって。なんだか人がいっぱいいるような気がするって』、という表現が出てきても何故だか怖くなくなっていく不思議な物語。「私の家では何も起こらない」。そう、あちらの世界の方は何も起こさない、こちらの世界の我々が勝手に匂わない匂いを感じたり、居もしないものが見えると叫んだりするだけと気づかされるこの物語。恩田さんの筆の上手さを改めて感じた作品でした。
2021/03/26
ヒロ@いつも心に太陽を!
最近ホラー作品に対する耐性が出来た気がして以前から気になっていたこのタイトルを手にしてみた。なんというか・・・実際ならばかなり気持ち悪くなる場面もその描写がどこか気品を感じさせる書き方のために想像していたような怖さは感じない。(※暗闇に不安を感じたり背後を気にしたりするような怖さ)逆に「この屋敷にはどんな人のどんな記憶が残っているのだろう」と先が気になりあっという間に読了。なんか不思議な感じ。怖かったはずの幽霊たちも大工の話ではちょっと可愛く思えた。この短編が一番好きな私はやっぱホラーは苦手なのかも?
2011/02/03
しろいるか
『幽霊屋敷』とのいわくつきの古い洋館。過去より持ち主が転々とした丘の上の洋館には、やはり「何かある」・・ぞくっとするけど美しい筆致はさすが恩田さんという印象で、次元もどこの国かもはっきりわからない不思議な世界に迷い込んで、一気読み。ちょっとグロいところもあったけど面白かった。特に『俺と彼らと彼女たち』は結末に快哉。古い洋館の中にいるような装丁も世界観にぴったり。
2011/06/28
nyanco
最近の恩田作品はやや難解なものが多かったのですが、本作は恩田さんらしくそれでいてとても解りやすい秀作。幽霊屋敷を舞台に繰り広げられたのは陰惨な事件ばかりなのですが、目をそむけたくなるような嫌悪感を感じない。それどころかとても美しく感じてしまうのは恩田ワールドが見事に作り込まれているせいでしょうか。スプラッタホラーになりそうな話なのに、切なく哀しくそして美しい。恩田さんの手腕に脱帽です。味付けも様々で恩田さんの様々な色を見せていただけた見事な連作短編集。〆に書き下ろしも加えられた贅沢な逸品。
2010/01/31
nuit@積読消化中
最近、手に汗握るものばかり読んでいたせいか、とても素敵な装丁とホッコリな語り口に癒されました。あ、でも一つ一つの内容は、意外と凄惨な幽霊屋敷ものでもあります。同じ幽霊屋敷で起こった連作集で、個人的には『俺と彼らと彼女たち』が好きです。こちは出版当時に装丁に一目惚れして購入し、長年積読状態でしたが、装丁からの流れではありましたが、恩田陸さんの作品を手に取ることができて良かったです。これを機会に恩田さんの他のものも読んでみようと思いました。
2017/04/06
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