乱暴と待機 (MF文庫ダ・ヴィンチ)
乱暴と待機 (MF文庫ダ・ヴィンチ) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
演劇的な小説であるとは言える。そして、一応は実験的な小説であるとも。しかし、当初の思い付きから小説を起筆し、その後の展開を登場人物たちの恣意性に任せたために、構想力の欠如という結果に終わってしまった感は否めない。すなわち、小説としてのリアリティの破綻とはいわないまでも、少なくても共感性を放棄することにはなっただろう。私の評価では、これまでに読んだ(とはいっても、まだ5冊目に過ぎないのだが)本谷有希子氏の小説中では最も低いランキングとせざるを得ない。
2018/06/10
ゴンゾウ@新潮部
英則と奈々瀬のどうしようも無い関係。支配する側とされる側、復讐する側とされる側。監視、束縛、異様でいびつな関係がふたりにとっては不可欠な状態。本谷さんしかきっと書けない狂気な世界。強引にいつも引き込まれてしまう。
2016/12/24
Shinji
何、この展開!? 登場人物は少ないけど、全員どこかおかしい! それなりの世間的対応は出来るんだろうけど、それぞれの思考や言動にイライラさせられっぱなしでした。 でも率直に面白かったですね!本谷有希子さん、ずっと読みたくて積んでいたんですが、ガッツリ合いそうです。 小ネタが所々にちりばめられていて、初読みの作家さんに対する妙な構えがすぐになくなりました。英則の変態っぽい行動も、奈々瀬の相手の気持ちを想像する癖も、ホントは純粋ってところからきてるのかもしれませんね♪
2016/01/27
hit4papa
復讐の機会を伺う男とそれを待ち続ける女の歪な同棲生活。男は、十二年前の不慮の事故を当時小学生だった女になすりつけ、女は理由も分からず四年に渡る監視生活を送ります。最早、憎しみ理由も判然としない二人の異常な生活は、ドロドロではあるものの、著者ならではの語り口ゆえに、時に可笑しさが溢れ出します。男の職場の後輩、その恋人が現れて二人の凍った時間が動き始めるという展開。ドロドロ度がさらに増して、行き着く先に興味がそそられます。女の言う「永遠の愛は疑ってしまうけど、永遠の憎しみなら信じられる」は名言です。
2022/05/09
なゆ
なるほど。穂村さんも言ってる、最高に「気持ち悪い!」ハッピーエンドだわ。最後の一行なんて、おぞましくてゾゾゾとするんだけど、なんでか嬉しそうで幸せそうで…この混乱した読後感をなんとしよう。ここまで狂気に徹すると、かえって気持ちいい。すこしずつ勿体ぶるように二人の関係が明かされていくうちに、番上とあずさみたいにこのヘンな世界に巻き込まれていく。どちらもめんどくさい英則と奈々瀬、この2人の閉ざされた世界は一般人には理解不能だが、ふたりの間ではそれなりに楽しかったのだろうし、これからもきっとそう。お幸せに♥
2016/04/17
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