日出処の天子 〈完全版〉/第7巻 (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
日出処の天子 〈完全版〉/第7巻 (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ) / 感想・レビュー
南北
厩戸皇子の思いは毛人には届かず、孤独な魂は癒やされることはなかった。皇子は政治や外交の世界に居場所を見いだしていくことになりそうだ。これだけ迫力のある作品に出会うことは珍しいが、著者のロングインタビューにもあるように「あのときだから描けた作品、若いエネルギーがないと描けない世界でした」というのも頷ける。題名しか知らない作品だったが、読む機会に出会えて良かったと思う。表題の他に掲載されている馬屋古女王の物語では厩戸皇子の娘で皇子そっくりの馬屋古女王が一族滅亡を象徴しているようで恐ろしい感じがした。
2022/04/09
ぐうぐう
完全版で再読。厩戸における間人姫と毛人、毛人における厩戸と刀自古、二組の相似的構造がもたらせるせつなさ、そして哀しみ。その配置が導くドラマは、見事としか言いようがない。巻末のインタビューで、あるいは最近のインタビューにおいても、山岸凉子は厩戸と毛人が結ばれる結末を描くことも可能だったかもと告白しているが、いやいや、結ばれぬゆえに、そこに読者は見果てぬ夢想をいつまでも込められるからこそ、この作品は名作となったのだと思う。飛鳥の歴史に、空白があることで、『日出処の天子』が生まれたように。
2016/10/23
ぐっちー
異能の力を持ってしても、真に求める物は手に入らない。その悲しみと孤独が加速していく。その痛々しい因果は更に次の世代にまで、引き継がれ、一族の崩壊を予兆させる場面で長い長い物語は幕を閉じた。漫画史に残る屈指の名作だと思う。
2012/07/04
つむ丸
連載当時も、愛を求めて得られぬ異能の王子の物語のこの結末に、哀しみを感じたものだったのですが・・あれから25年の月日を経ても、けして古びないこの感覚。この物語と同時期の生を受けた自分の幸福をかみしめて読みました。「馬屋古女王」は単行本化したものを持っていなかったので、雑誌掲載時以来の再読。しかし親の世代が作った因縁を引き受けて苦悩する上宮王家の人々の痛々しさが本編以上に哀しく、崩壊への予感で読んでいて苦しくなるほど。完全版を堪能しました。
2012/05/18
コリエル
完結。思った以上にドロドロしていて、そこが面白い。超越者でありながら、人に交じる欲求に挟まれアンビバレンツな状態に置かれたことが厩戸王子を魅力的な存在として描いていたと思う。続編の短編は、願っても決してかなわないが故の捨て鉢の生を送ったが、彼が生きていた間だけは決定的な破局は避けられていたという危うい綱渡りの姿が想像されて、描かれなかった数十年の冷え冷えとした時間が窺える。刀自古もな…
2021/12/15
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