猫泥棒と木曜日のキッチン
猫泥棒と木曜日のキッチン / 感想・レビュー
おかむー
淡々としたなかに漂う優しさと悲しみは相変わらずの橋本紡ながら、タイトルと装丁の柔らかさとは裏腹にすこーし容赦ない。でもラストは“らしく”収まって『よくできました』。主人公・みずきは冷静に物事を割り切っているようで、それがむしろ危うさを感じさせる「欠けている」部分なのだけれど、寄り添う健一の存在が距離を保っているようでやはり何かを埋めていたのだろう。猫へのこだわりは母へ捨てられた自分と弟の投影であり、気まぐれな母そのものでもあったのかな?健一の視点で描かれる『少年の憂鬱』での北嶋とのやりとりが微笑ましい
2014/10/28
風里
親が子を捨て、子が親を捨てる連作短編集。 親になりきれない親はどこにでもいるもので、そういう人を親と認めて生きていかなくてはならない子供は本当に不幸だ。 殺伐としているからこそみずきの達観が際立つ。
2013/11/09
えりこんぐ
初読み作家さん。冒頭から母親に捨てられる高校生のみづき。しっかり家事をこなして、どこか冷静なのだけれど本当の気持ちは..? あらすじの割に、重くなりすぎないところがいいな。でも猫好きにこれはキツい..。猫ちゃんたちが助からないシーンは辛かった(;o;)
2017/04/12
seri
淡々と、静かに心が動いていく。完璧な人間なんていない。大人も、もちろん子どもも。親になったからって、誰もがちゃんとしたお母さんになれる訳じゃない。子どもだって傷つくだけの存在じゃない。傷付いた分だけ、理屈を越えた理解が進む。きっとそれを人は成長と呼ぶ。これは家族の形と捨てられた命の話。テーマは重いはずなのに、軽くてドライで不思議な読後感。かといって後に何も残らないわけではなくて、ふとした一言が響く。不思議に温かい気持ちになれる本でした。
2013/12/04
@
変わったタイトルだなーと思ったけど、読後に納得。橋本さんの小説はフワフワしているけど、何気ない一文がズドンって的を得ていたりして読んでいて不思議な感覚に陥ります。お母さんが出て行って、弟のコウチャンと住んでいるみずき。何かが欠けていて一人で踏ん張っている姿もたまに痛々しくみえてしまう。それでも健一くんの存在や、道端での「絶望」とのであいによって何かが動き出す。命って、軽い。誰かの手によって簡単に捻り潰すことが出来てしまうから。だからこそ尊いのかもしれない。命を預かるならそれなりの責任を持たなくちゃ。
2013/11/03
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