花のなごり -奈良奉行・川路聖謨-
花のなごり -奈良奉行・川路聖謨- / 感想・レビュー
wasabi
川路聖謨の日記『寧府紀事』に基づいた小説という。よって、事件やいざこざのあらましは史実に基づく。「仙石騒動」しかりだが、これに付随して石見国浜田藩では竹島事件があったと初めて知る。よもや隣藩でかような密貿易が行われていたとは。ましてや、それを暴くのが間宮林蔵で、先に読んだ『噂を売る男』でもシーボルト事件を暴いた幕府隠密の御庭番だ。竹島が舞台となれば俄然興に入る。調べると、現在の竹島ではなく、当時は鬱陵島を竹島と呼んだらしい。とはいえ、現在の竹島問題に通じるきわどい論争がある。これを知っただけでも価値あり。
2022/01/04
Ryoichi Ito
「桜奉行 幕末奈良を再生した男 川路聖謨(養徳社 2016)」の後編。江戸期最優秀とされる幕臣・川路聖謨が奈良奉行として過ごした五年間,江戸の実母に読ませるために書き送った日記を元にした創作。十日以上もかかる正月の行事など幕末の上級武士の生活はなかなか興味深い。川路の出世の糸口になった出石藩仙石騒動の裁断を長々と書いているが,これは奈良時代のことではない上に事件自体興味が持てない。戸城総攻撃が予定されていた慶応四年三月十五日,幕府に殉じてピストル自殺。妻がその様子を日記に書き残している。
2022/03/23
おかめ
「桜奉行」の続編。人好きのする能吏の若き日の活躍談、奈良奉行ののちの活躍も語られている。なぜピストル自殺を図ったのかも判明。それにしても日記がいろいろ残っているってすごいなぁ。
2023/09/17
マウンテンゴリラ
不思議なもので、感覚的には江戸時代と言えば、遠い昔という印象が伴う。一方で、その直後の明治時代は、近代化の始まりというイメージが強いせいか、現在との連続性が感じられる、華やかな時代という印象があった。しかし近代が良き時代と言うのは、半ば刷り込まれた幻想と見る向きもあり、それに伴って、江戸時代の社会や人物についても、新たに評価する風潮にあるとも感じられる。その代表的人物の一人が、本書の主人公である、川路聖謨であるとも言えるのでは無いだろうか。とは言え、私自身は、その業績や為人について、→(2)
2023/05/16
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