昭和初期世界名作翻訳全集 (178)
昭和初期世界名作翻訳全集 (178) / 感想・レビュー
KUMAGAI NAOCO
森鴎外の翻訳による、リルケやシュミットボン等の短編集。文体は舞姫同様、固い印象を受けるが内容は著名な「白」とか「老人」とか「鴉」とか。どれも静かな時間が流れている日常のちょっとしたシーンの切り抜きみたいな印象。その中で異色なのはシュニッツレルの「アンドレアス・ターマイエルが遺書」。妻の謎の妊娠と義妹の疾走事件、その後妻が出産した自分と似ても似つかぬ子供の誕生に、家と家族の名誉の為に自殺しようとしている男の苦悩。真実がはっきりしないが、性犯罪が一家を狂わせている残酷さ。何とも辛い。
2023/05/03
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