定本 薔薇の記憶 (立東舎文庫)
定本 薔薇の記憶 (立東舎文庫) / 感想・レビュー
井月 奎(いづき けい)
宇野亜喜良はこの本の中で画家とイラストレーターの違い、その大きな一つとしてイラストレーターはイメージやモチーフの要望があることをあげています。決まった世界で自分の描きたいことを描く不自由の中の飛翔が彼の本領でしょう。艶とエロが、醜とグロが不思議に混在するイラストはそれでもなぜか品がよく、涼しい香りがします。その底に隠れている猥雑さと熱を感じたときには宇野亜喜良の術中にはまっていて、ふと気が付くと目が大きくてまつ毛の長く、小ぶりな乳房をもつ女性のイラストを求めることになるのです。中毒性が高い絵で、文です。
2018/05/30
あ げ こ
何とも贅沢な一冊であった。贅沢に詰まっていた。その時間ごと、詰まっていた。美しいもの、官能的なもの、退廃的なもの、淫靡なもの、刺激的なもの、奇妙なもの、楽しいもの、面白いもの、不可思議なもの…豪華ではあるけれど、思いの外雑然と、親しみ易い形で詰まっていた。その時間分、雑多であり、宝箱のよう。葛籠のよう。ジュエリーボックスのよう。バニティケースのよう。夢を含み。幻想を含み。毒を含み。熱を含み。変化を含み。日常を含み。期待を含み。充足を含み。持ち主が離れても。自ら息吹き。密かに薫り続ける。密かに煌めき続ける。
2017/10/29
坂田 哲朗
この方のイラストしか見たことがありませんでしたが読んで見て、ロゴスの人でもありパトスの人でもあり、それがこの方の中で交感してロマネスクなエロスになっていく。 「グラフィック・デザインという世界で作品をつくっていた頃の僕は、意識の開放という時間を持つことから仕事をスタートさせていたようだ 。そこで要求されるのは、因果応報的なストーリーを排除した、説明なしでわかる簡潔な 〝一枚の絵 〟だから、僕の方法論もそれに応じる形をとっていた、ということなのかもしれない 。」
2017/07/08
yasuyuki suzuki
イラストレーターでデザイナーの宇野亞喜良、イラストを見れば見慣れた作品なのだけれど、作者名がでてこない。1960年代から書き続けたエッセイ、映画、絵画、作家、人物評など知られざる世界が盛りだくさん読んでいてネット検索して、なるほどとうなってしまうほど、面白かったです。あなたも知られざる芸術の世界へどうぞ。
2017/06/25
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