ボンバ! 手塚治虫ダーク・アンソロジー (立東舎)
ボンバ! 手塚治虫ダーク・アンソロジー (立東舎) / 感想・レビュー
keroppi
手塚治虫の1970年頃の作品集。暗く残酷で鬱々とした作品たち。その頃、虫プロや虫プロ商事はトラブルばかりで、手塚治虫自身の鬱々とした心情が投影されているのだろう。人を恨み、人を信じられず、それでもこうやって漫画を描くことで精神の安定を保っていたのかもしれない。この本に収録された「ガラスの城の記憶」カラー扉絵を見るだけで、その当時の手塚治虫の狂気じみた心が見て取れる。「ガラスの城の記憶」の冷凍冬眠や近親相姦というテーマは「火の鳥 望郷編」に、人間狩りというテーマは「火の鳥 生命編」に受け継がれたようだ。
2020/11/21
ムーミン2号
奇しくも1970年に連載が開始された4作品が並べられているが、いずれも濃淡はあるにせよ、暗~い内容で気分は鬱々としてしまう。中でも「ガラス城の記録」は人工冬眠による社会性の崩壊した人間が描かれていて厳しい内容なのだけど、それがこれから大きく局面が動きそう、というところでStopしているのだからやり切れなさばかりが残る(連載中止は掲載誌の休刊による)。表題作も暗~い作品で、加えて主人公が信じ、恋していた女性による裏切りが、やり切れなさに拍車をかける。実は最後は救済が用意されているのだけど、それさえ霞む。
2019/10/13
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