モノリス
モノリス / 感想・レビュー
jahmatsu
日野先生のエッセイ集はそれなりに読んだが、この感性には毎度、頭を思い切り引っ叩かれた感覚。雑誌エスクァイアの連載かららしく、コンパクトにまとめられているが濃厚。都市から科学、そして宇宙へ向かっていくあたりは神々しい。 装丁もバブリーな作りの良き時代。
2020/04/15
Bartleby
科学的な知見や都市の描写に著者の思索を絡めたエッセイ。切り詰められた文章で一篇一篇は短いながらも、読む側に見える光景を変えてみせるだけの力を持っている。「黒衣の男たちの谷」は特に幻想的でうまい。「ごみを捨てにゆくとき」等は題材が卑近なものだけに読みながら思わず自分自身の生活のことを省みてしまう。
2014/10/14
rou
作家の、詩人としての感受性と冴えた知性が交錯した、短くも小説の核心のようなエッセイ。都会のビル群の中で、砂漠で、漆黒の森で、シャーマンとしての資格のうちに深部までを凝視する。私たちの、与えられた、抜き差しならない悶え怯えながらの生、しかしその向こう側に、水平線の稜線へと水が溢れる瞬間そのものような感受性でもって読み手に何かを届ける、そういうエッセイだった。日野の幻視の技法、それを思い出した。日野が委ねる先のものは夢でありさわやかな孤独でありしなやかな空虚だった。まためちゃくちゃ読みたくなった。
2019/06/28
更新停止中
ジャコメッリの写真展で壁を接写した作品を見るうちにふと読み返したくなって。前に読んだ時は特にどうとも思わなかった、ごく短い「メンチカツを作る」一節が何故か印象に残った。この作者の持っている、無機的なものに憧れながらどうしても人間同士の結びつきへのウェットな執着みたいなものがある作風には愛憎入り交じってしまうのだけれど、本人も己のそういう所に複雑な感情を持っていたのだろうな、という描写として。
2013/04/19
更新停止中
この作者の書いているものから受ける印象をものすごく大雑把に粗雑に言うと、「白くて乾いて動かず無機的なもの」と、「黒くて湿って蠢く生命のようなもの」と、その両者が決して対立概念ではなく、表裏一体でさえなく、区別さえされ得ないものとしてそこにあるということ、というような感じなのだが、この本はどちらかというとその中で「黒い」方に軸足を置いているような感触。そういう意味で自分の中では「Living zero」と一対の本。/最近古本屋で救出。取り合わされた写真との調和といい、美しい本なので入手出来てよかった。
2011/05/25
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