メッセージ トーベ・ヤンソン自選短篇集
メッセージ トーベ・ヤンソン自選短篇集 / 感想・レビュー
アキ
実に味わい深い短編集。日本のアニメもあり晩年には年に2千通にもなる手紙の返事を書いていた。著者はさまざまな人生を書いただけでなく、読んだり聞いたりしたのだろう。ユダヤ系のせいで米国に渡った「ココニヴァへの手紙」、他人の子供を預かるひと夏の家族「夏の子供」、どこへ行っても人の悩みに巻き込まれてしまう「軽い鞄ひとつの旅」、島の孤独な生活を際立たせる「リス」、シモムラ氏の数本の線で描いた「オオカミ」、日本の女の子からの手紙「文通」、電話の留守録「メッセージ」などフィンランドの無人島で書く著者を想像しつつ読んだ。
2021/05/01
榊原 香織
2021年、トーベの没後20年を記念して、生前最後の自選短編集を翻訳したもの。 スウェーデン在住日本人がスウェーデン語から翻訳。平易で分かりやすい。自選だけあって良い作品 トーベ・コレクション(訳;冨原 眞弓)に入っているものがほとんど。訳者によって随分雰囲気が違うと実感。そちらは仏哲学者らしく硬質な文章、作品によってはその方が生きる物もある。 これでトーベの翻訳出てるものは全読。(ムーミンコミック除く)
2022/04/27
アヴォカド
ちょっとズレてて、でもいるかもこんな人…が出てくる話が面白かったな。クスリと笑ってしまう。『ローベット』『夏の子ども』『ある愛の物語』『自然の中の芸術』◎。『夏の子ども』で何度も繰り返される「起きたことは受け入れるしかない」というフレーズを、しかと受け止めるよ。
2021/06/04
やま
トーベ・ヤンソンの最後の短編集。ムーミンの作者として知られるトーベ・ヤンソンは小説なども書いていて、以前に誠実な詐欺師というのを読んだ。そのときに思ったのは、心理描写が多くて入り込むのがむつかしそうだということ。◇この本もいろんなパターンの、時には緊張感が走り、時には孤独を感じ、時にはミステリアスな関係の二人がでてくる。訳者の後書きを読んで、二人がテーマということを理解した。◇やはり戦争の影響なのか、それとも北欧という地のせいなのか、照り付けるような日もなく、仄暗い時間が続いている。暗いけど魅かれる物語。
2022/01/20
まこ
登場人物の多くは藝術に命を懸けていて、作者は彼らを応援している話が多い。人物たちの年齢や立場を超え、時には親子や恋人関係にも作者の面影や実際に体験したエピソードを感じる。連載漫画家とかまさにそう。登場人物が違っても前の話の続編だったり対になったりする話がある。「コニカとの旅」ではカメラが美しい風景を写す反面、そこに人がいない虚しさを描き出していた。
2021/04/11
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