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ふたりの村上

ふたりの村上

ふたりの村上

作家
吉本隆明
小川哲生
出版社
論創社
発売日
2019-07-06
ISBN
9784846018283
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ふたりの村上 / 感想・レビュー

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アキ

これらの新しい作家たち、村上龍・村上春樹は文明生活の限界を像・イメージの集約力だけで示そうとしていると見た。村上龍は現実的な人間の快楽行為の本質を提示する以外にどんな意味も与えようとしないことが創作のモチーフと断ずる。村上春樹は喩の作り方がうまく、作者の文体が長い年月の果てに生み出したひとつの達成というべきと論ずる。村上龍「料理小説集」Subject5は瞬間を表した不朽の名作。村上春樹「蛍」に現れる多彩な像が文学作品を芸術にしている本質と指摘。吉本隆明がこれら20もの論によって彼らが「現在」を象徴する⇒

2019/09/26

aloha0307

「思想界の巨人」と呼ばれ、詩人でもある吉本氏が80年代前半当時、新進気鋭であった”二人の村上”(即ち 龍さん、春樹さん)を、性器愛の不可能と情愛の濃密さの矛盾として、愛の不可能の物語を描いた初めての作品とし、純度をかつてないレヴェルまで高めた、とした。”ノルウェイの森”での直子の言葉の反射、動作に少しのテンポの緩さで心の病を表現したとされます。龍さんは、”瞬間”の連続で成り立たせるドラマを言語行為として表現...こころの病と健常の狭間で揺れ動いているのだね。

2019/12/29

tokko

村上春樹と吉本隆明の名前につられて買ってしまったけれど、ちょっと読むのはまだ早かったかなぁという印象を持ちました。その一つが村上龍の作品を全く読んだことがなかったことです。もちろん各章ごとにそれぞれの作品について論じているから、作品を読んだことがなくても素通りできてしまいます。けれど吉本さんが言おうとしていることを正しく読もうと思ったら村上龍さんの作品についての批評も、どういうことか理解した方がいいような気がします。というわけで次は村上龍さんの作品を読み漁ろうと思います。で、もう一度この本に戻ってきます。

2019/12/14

しんすけ

面白いが期待外れを感じさせる本である。村上龍と村上春樹の作品比較論を期待していたのだが、それは一切ない。 編集後記には吉本隆明が「ふたりの村上」なる作品を用意していたような記述があるが、表現が不適格で実態が把握できない。 収録の一つ「走行論」は太宰治分析とも云うべき作品であり、その崩壊的思考と破綻的性格の側面が充分に描きだされている感がある。 以降では村上龍と村上春樹は単独の批評作品として語られていくが、現代日本文学に内在する崩壊的表現の起源を語ったようにも思う。

2019/12/14

KAMAKURA

稀代の批評家による村上春樹、村上龍の現代文学を代表するふたりを中心とした批評集。 (このタイトルでは誤解されやすいが両村上を比較して論じているわけではない) 純粋理念的理解の不可能性を感じつつ読み了えたが、 ときには背伸びしてこの手の本に手を出すことも読書の幅と深さと奥行きを得るのに大事だと思う。 《春樹の主人公「僕」は卑小な社会的外観をもちながら、偉大な欠陥のないこころを発揮している。 破滅をかけてやることなど、ほんとはなくなってしまった現在では、この「僕」は充分にヒーローの条件であり得る》同感である。

2020/04/19

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