詩ふたつ
詩ふたつ / 感想・レビュー
ヴェネツィア
長田弘の詩2編とクリムトの絵で構成された詩集。長田の詩は亡き妻の瑞枝さんの思い出に心を込めて書かれたもの。最初の1篇がよりダイレクトにそれを詠い、後半の詩はより普遍化へ昇華されている。今の自分には心に沁みる。クリムトの絵は金色のそれではなく、すべて樹木の緑と花に彩られたものばかり。長田によれば、それは「めぐりくる季節の、死と再生の画家」だと。この詩集の主題もまさに「死と再生」にあるだろう。死は終わりではないと長田は言う。
2024/02/25
❁かな❁
お気に入りさんの感想から手に取ってみました*長田弘さんの作品を読むのは3作目。今作は詩ふたつからなる一冊の作品集。死について優しく静かに語られていて、とても共感しました。そしてその言葉と一緒にクリムトの絵がたくさん掲載されていて素晴らしいです*クリムトと言えば代表作の接吻などの煌びやかな金のイメージでしたが草花も多数描かれていたんですね。絵を楽しみながら静かにゆっくり文章を堪能させてもらいました。「なくなった人は言う。どこにもいないのではない。どこにもゆかないのだ。いつも、ここにいる。」とても素敵な作品。
2015/06/24
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
『花を持って、会いにゆく』『人生は森のなかの一日』の二篇の詩と、グスタフ・クリムトの絵画。2009年に旅立った奥さまに捧げた静謐で美しい本です。長田弘氏にとってクリムトは〈死と再生の画家〉なのだそうです。人は死んでどこかに行くのではない。どこにも行かず、いつもここにいる。語らうことができる、いつでも。あとがきで長田氏が記した「親しい人の死は後にのこるものの胸に生の球根を遺す。喪によって、人が発見するのは絆だから」という言葉が胸をつきます。いつか、「人生は森のなかの一日のようだった」と言えたらいいな。
2015/05/17
masa@レビューお休み中
嗚呼、何という心地よさなのだろうか。絵があって、詩があって、間があって…。心地よさと、優しさと、温もりがここにはある。言葉だけでは足らず、絵だけでも足らないときがある。もちろん、そこには人間の想像力を発揮することも可能なのだが、想像せずともそこに必要な言葉と絵があればいいということを実感させられる。クリムトの絵は派手で奇抜という印象があったが、ここにある絵は自然の情景を叙情的に描いたものばかりで絵の中の世界にすぐ入りこむことができる。死や人生や自然といった重いテーマを扱っているのに軽さすら感じるのだ。
2016/11/03
アン
長田さんの二編の詩とクリムトの風景画が寄り添った美しい詩画集。『花を持って、会いにゆく』「死ではなく、その人が じぶんのなかにのこしていった たしかな記憶を、わたしは信じる。」なんて力強く優しい言葉だろう。あなたは「どこにもゆかない」。野原一面に咲き零れる芥子が微笑むように、いつもいてくれる。『人生は森のなかの一日』「きみは悲しみをもたずにきてくれ。」いつか訪れるその日がきても豊かな森に抱かれるように穏やかに。生と死を巡る静かな情感を湛えた言葉たち。柔らかな光に包まれるよう。あなたに出逢えてよかったと。
2021/08/16
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