ナボコフ全短篇
ナボコフ全短篇 / 感想・レビュー
ケイ
沼野氏によると、トルストイのアンナ、チェーホフの『犬を連れた奥さん』、そしてナボコフによるこの短編で、各時代における女性の不倫の捉えられ方が見られるとのことで『フィアルタの春』を精読した。主人公のニーナは奔放なのにいつも哀しみを抱えている印象。そんな直接的描写はないけれど。わずか24頁の作品だが、その全体を貫く美しさが絶品。そして、ラストで読み手の私の口から漏れるのは、小さな悲鳴。沼野氏が作品を愛するあまりに美文にしすぎたのではとも思えるほどの勿体をつけた文章たち。ため息なしには読めない。おすすめ。
2017/08/13
優希
ちまちまと読んでいました。ナボコフの作家としての生涯の中で書いた短篇を全てまとめた1冊なので、お得感があります。それぞれの短編が1つとして同じ表情を見せてはいないのが、流石言葉の魔術師と言われるだけありますね。万華鏡のように変わる世界観があります。長編もいいけれど、短編も様々な表情を見せるのがいいですね。凝りすぎなほど凝っているので、長編以上に読み応えがありました。破綻がないのに異常な雰囲気。そこに魅力があるのだと思います。
2017/09/06
燃えつきた棒
『賜物』の解説で沼野先生がふれていた『賜物』の第一付録である短篇「環」が読みたくて手に取った。 それと、「短編を10作品選んで史上最高の短編集を作れ」に挙げるべき一作が見つからないかという期待も込めて。 それに、沼野先生一推しの「フィアルタの春」を、もう一度読んでみたかったのだ。 ここには、ナボコフを好きになる68の方法がある。 ゆっくりと時間をかけて何度でも読み返したくなる短篇集だ。/
2022/01/15
Tonex
言葉の魔術師の異名をとるナボコフがその生涯に書いたすべての短篇小説を1冊にまとめた本。▼この手の本は持っていることに安心して読まずに放置するのが目に見えているので、とりあえず一通りざっと目を通したが疲れた。初読から面白いものもあれば、一回読んだだけでは意味がよくわからないものもある。本当は一篇一篇じっくりと分析しながら3回ずつ読むのが理想。
2016/07/01
Yusuke Oga
図書館本。この中のたかだか数編しか読めていないけど、めちゃくちゃいろんな題材で、手を変え品を変え、ちょっと凝りすぎなぐらい工夫に充ち充ちた短篇もたくさん書いていた人なのだなあとあらためて確認。あまりにも破綻がどこにもなく、筆の暴れや無茶すらも完璧にコントロールされているような読み心地が良くも悪くも、異常で、その執心たるや、恐ろしい。とんでもなくある能力が発達しているけれど、おおきく何かが欠けている子供がいつも背後で嘲笑の笑みを浮かべているような印象が、やはり天才の天災たる所以なんでしょうか、ワゥゥー。
2014/11/24
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