ストーナー
ストーナー / 感想・レビュー
紅はこべ
東江一紀さんというとドン・ウィンズロウのイメージが強かったので、こんな静謐な小説を訳されていたのに驚いた。美しい小説ってある意味退屈。真剣に結婚を願った相手が実は添うべき相手ではなくて、結婚後に運命の恋に落ちるって、福永武彦の『海市』を思い出した。イーディスはヨーロッパ旅行に行ってから、プロポーズの返事をすべきだったのに。職場にも家庭にも敵がいるって辛い人生だな。
2015/04/24
ケイ
ストーナー、名前に含まれるストーン=石という言葉に相応しい男。作家は、彼の人生を飾り立てることなく、愚直で妥協しない、黙々と生きる男を描いている。その描写は見事だが、作者にはイーディスやグレースにもっと優しい目を向けて欲しかったと思う。人生がストーナーには上々だったとしても、彼女たちにはもっと厳しいものであるように感じられた。私は圧倒的に「ブッチャーズクロッシング」の方が好きだな。
2019/03/01
miyu
彼の、この人生。ごくありふれた、特に運に恵まれたとも思えない、ほんの些細な一生。自分のちっぽけな運命を淡々と受け入れているようにも見えるのに、譲歩できないことには頑ななまでに拒み棄て去る。そう、ストーナーはとても頑固な一生を送った人。あの妻、あの同僚、あの教え子の存在が立ちはだかろうと、彼はもしかしてけっして不幸せではなかったのではないか。なぜならば、結局は彼は思い通りに生きたのだから。思い通りに生きて、そして思い通りに逝ったのだから。言葉にするのは難しいくらいに感銘を受けた。なんて愛おしい人生だろう。
2014/11/30
ケイ
再読。1960年代に書かれた話が半世紀後に欧州で爆発的に共感をよんだ理由を考える。中西部の農家出身の男の地味な一生。しかし、好きな事だけを選んだ結果で、不足はなかったとも言える人生だ。寡黙で優しい両親、少ないが一生の友、一目惚れした妻、しっかりとした家、可愛い娘、聡明な愛人があったではないか。そして何より文学、本、著作。どんな人にもそれぞれの物語がある。完全に満足のいくものなどないだろう。しかし、そう言う結論で済ませてしまえば、本質を見失う。奥にある深さ。決して譲れなかった精神。そして文学へのおもい。
2021/09/18
どんぐり
2015年の第1回日本翻訳大賞読者賞受賞。訳者はドン・ウィンズロウの翻訳小説で知られる東江一紀氏。これが最後の仕事になった。本書の主人公ウィリアム・ストーナーはミズーリ大学の教員で、中世の文学研究と論文指導に明け暮れ、准教授より上の地位に昇ることはなかった。「成り上がれる才覚はあっても、それで押し通すには図々しさが足りない」と、同僚や学生からは偏屈学者扱い。結婚生活に恵まれず、新婚早々別居生活のような状態で、夫婦の心を通わせることもなくなっていく。大学では学科主任と対立し、その矢面に立ちながらも淡々と仕事
2016/08/11
感想・レビューをもっと見る