創造元年1968
創造元年1968 / 感想・レビュー
ムッネニーク
159冊目『創造元年1968』(笠井潔/押井守 著、2016年10月、作品社) 作家・笠井潔と映画監督・押井守による対談本。60年代後半に世界中で巻き起こった過激な反権力運動を主題に、熱心な活動家だった笠井と押井が自身の経験を踏まえて語り明かす。話題は戦後日本のシステムから天皇制、稲作、仏教伝来、サブカル、創作論と幅が広い。活動の渦中にいた笠井と乗り遅れた世代の押井。この差がそれぞれの思想にも深く影響を及ぼしているように思う。 〈ふと思うけど、自分という人間は、あの時代に拘束された幽霊なのかもしれない〉
2023/12/18
ぐうぐう
1968年に二十歳と十七歳だった笠井潔と押井守。あの時代を体験した二人が、あの時代から現在を照射し、日本を語る。二人の日本人論や日本論は、それぞれの著書をあたるほうが正確なので(例えば笠井潔ならば本書でも何度も引用される『テロルの現象学』、押井守ならば『押井言論』辺り)、ここではあくまで二人の創作の方法論に焦点を当てて読むほうが正しいのかもしれない。ユニークなのは、同じ時代を体験しながらも、あるいは互いの作品に共鳴しながらも、二人の創作の姿勢が違うことだ。(つづく)
2017/01/15
kei-zu
5年前、千葉県の国立歴史民俗博物館で、1968年の社会情勢が取り上げられ特別展が開催された。一緒に訪れた30代の大学の先生は「過去の日本には「内乱」があったんですね」と感慨深げ。私はと言えば、自分の生年であり、複雑な思いがありました。 押井監督の最近の作品は追いかけていないのですが、当時の闘争活動の合間に挟まれる自作の解説が興味深い。 軍事書籍が多い、江東区のBook & cafe「ドレッドノート」で購入。
2022/10/18
ndj.
このふたりの根幹には第二次世界大戦において日本が正しく負けなかった─本土決戦をしなかった、中途半端に負けた、という意識がある、ということに少なからず驚いた。「過剰なまでに暴力や破壊に引き寄せられていく傾向」(笠井)、祝祭としてのテロル?「生涯一ガキ」がふたり。さてこの「老害」をどう乗り越えていけばよいのか。われわれの課題である。
2018/01/03
ポン・ザ・フラグメント
わだかまりの残る本だった。かつて運動へ向かった初期衝動を個的な廃墟憧憬やニヒリズムで説明しようとしているが、当時はそれを『経哲草稿』持ち出して疎外論で説明しようとしていたのではないかな。少なくとも運動に向かうならその方が筋が通っているだろう。「終わった」状況に出てきて「終わった」ということを言い続けてきた二人が、もはや「終わった」場所に立っているのではないことに気づいて慌てている。そんな本だ。あと気にかかったのは、この人たちってこんな吉本主義者だったっけ、ということ。
2016/11/28
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