テロルとゴジラ
テロルとゴジラ / 感想・レビュー
本木英朗
書き下ろしである表題のテキストは、笠井ならではのパラノイアックな論理の堅牢性と、一転してアクロバティックな論理の飛躍のバランスが華麗に収まった内容で、たいへん読みごたえがある。既に文壇で言及されなくなって久しい左派の小説家の作品論を通じ、日本の左翼がはらんでいた矛盾や、その矛盾ごと抑圧する「ニッポンイデオロギー」の存在を示したうえで、「戦没者の御霊」としてのゴジラが現代に復活した理由を解き明かす。「無能な中央」「有能な現場」という理解そのものが戦前や戦後に現れた失敗モデルの典型である、という指摘にも納得。
2017/02/17
田中峰和
時代のアイコンとしての機能をもつゴジラを筆頭に、様々な視点でサブカルとポスト戦後を繙く。膨大な知識背景を詰め込んだ思想論集なので、万人に向け解りやすいものではない。初代ゴジラは戦争の暴力と破壊の体現者として生まれ、2011年に東北地方を襲った巨大津波として復活したシン・ゴジラは、平和と繁栄の戦後日本を蹂躙した。シン・ゴジラの形態変化こそ、東日本大震災の象徴と論じる。海底でうごめく第一形態は大震災そのもの、大田区河川遡上の第二形態は津波、第三形態、第四形態は原発事故。ゴジラの形態変化を危機の変容と重ねる。
2018/01/31
マウンテンゴリラ
70年代以降のサブカルチャーに疎く、本書で語られるアニメや映画で視聴したことがあるものと言えば、初代ゴジラぐらいのものだが、解らないなりにも著者の言葉には引き付けられるものがあった。ゴジラが象徴するものとは、戦後に現れた第二のアメリカか、または、あの戦争で亡くなった日本兵の悲しみや怨念なのか。どのように捉えるかは、もちろん多様であって良いのだろうが、私自身にも著者の示す後者の視点がなかった。それを示されることにより、あらためて戦争へなだれ込んだ罪悪感に戦後生まれの我々も無縁とは言えないこと、→(2)
2017/08/29
コウみん
現代の日本社会をサブカルチャーに参考し、60年代の学生運動とアメリカの9・11テロ、東日本大震災などの現在の社会問題の批評を語った。 とてもショッキングな話ばかりで驚いたが、特にゴジラの意味を「戦死した軍人の魂」と書いたのがとても気になった。
2017/05/17
aritan
表題作「テロルとゴジラ」を最後にまわして読み終わりました。表題作の中のジャパン・バッシングの苛烈さが、個人的に印象に残った。「幻聴」として現れるアジテーションが、ちょっと唐突かな? あとで何か書き足すかもです。
2017/02/13
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