ディストピア・フィクション論: 悪夢の現実と対峙する想像力
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ディストピア・フィクション論: 悪夢の現実と対峙する想像力 / 感想・レビュー
渡邊利道
ディストピアやそれに関連して国家・政治・社会などを主題とする作品を論じた長編評論、かなり沢山の作品をいろんなサブテーマに弁別して紹介していて面白かったが、テーマに対する定義づけや理論的な枠組みが提示されていないので、なんとなく共有されている(だろう)一般的なイメージを前提してカタログ的に紹介するのにとどまっていて、ちょっと評論としては物足りない部分もあるかも。あと、笙野頼子の「おんたこ」シリーズについて全く触れられていなかったのはちょっと納得いかないかも。
2019/08/22
パトラッシュ
21世紀の日本文学で花盛りのディストピア小説について幅広く論じており、目録的にも一読の価値ありだが問題もある。反自民党である著者は安倍政権こそ副題の「悪夢の現実」だとの前提に立つが、安倍首相が民主党政権を倒して以後すべての選挙で勝っている事実を無視する。「無能な善の政権」より「有能な悪の政権」を選んだ国民の選択に一言もないのはどうか。また『北斗の拳』から『デスノート』『進撃の巨人』に至るまで続くディストピア漫画が小説に与えた影響には一切触れないが、サブカルチャーを見下すのは批評家として正しい態度だろうか。
2019/05/28
よいおいこらしょ
ディストピアとは「異常な管理社会」であり、イデオロギー、性、人間関係などなど管理対象は多岐にわたる。人はなぜディストピアを夢想するのか。それは、ままならない現実の嘆きから生まれる。この本では、この行き過ぎた管理社会の根底には現実問題が関係しているのではないかと、ディストピアと現実を地続きに結んでいる。ディストピアを引き合いに現実社会の問題点を論じた作品であり、ディストピアを文学的に考察する本ではなかった。そこが残念だった。
2021/01/22
たろーたん
ディストピア作品の多くは「監視と管理」か「権力の戯画」である。その中で焦点を当てられるのが「記憶・過去」と「身体(生殖)」である。現在におけるディストピアの新しい地平はポスト真実の話かなぁ。ただ、なんとなくだけど、ディストピアって行き詰まりを見せている気がする。権力者と画一化の話ばっかりなんだもの。それ以外のディストピアの可能性は存在しないのかしら。
2019/09/24
fantamys
現代の悪夢的世界と我々の欲望の実態。
2020/07/24
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