美しく呪われた人たち
美しく呪われた人たち / 感想・レビュー
ケイ
読んでいるこちらがつらくてたまらなくなるような痛々しさ。ドストエフスキーの『賭博者』を読んでいた時のような。そして、『ギャツビー』と『夜はやさし』の間にかかれたこの長編が今まで訳されてこなかったのがわかる気がした。お金や名声が欲しくて、持つ側の人が羨ましくて、その欠片をせっかく手に入れても、自ら潰してしまうような作者の酒臭い息が、行間から匂ってくるようだった。
2019/08/17
のれん
フィッツジェラルドは日本で言えば太宰治に近いと感じた。高慢な自信家であると同時に、怠惰であることを隠さない。 彼は自分の愚かさを常に客観視していた。愚かさとは、腑抜けた浪費であり、若さにかまけた無謀さであり、自らも衰えることを知らないことである。 アンソニーの魅力は金しかなく、グロリアの魅力は美貌しかなかった。 貴族に足りえるのは金や美貌は当然でその上で美学が必要だ。若き米貴族はそれを「滅びの美学」で補った。しかしながら散り際まで醜いのは頂けない。やっぱり愚かもんやね。
2022/11/20
erierif
大金持ちの祖父を持つアンソニー。教養もあり趣味も良く育ちの良さを漂わせている。女性ともうまく付き合っているがある日友人のいとこにあたる美女グロリアに巡りあう。恋に落ちた日々の美しいこと…フィッツジェラルドの華やかで退廃的でゴージャスは文をたっぷり堪能した。しかし、当初からアンソニーに虚無とグロリアに傲慢さを感じどこかこの美しい日々のかりそめの感じが切ない。やがて倦怠の日々。そして…フィッツジェラルドの胸を引き裂かれるような悲しみの描写がアンドリューの人生を容赦なく描いていく。
2019/06/19
ソングライン
友と夢を語り、自分の才能と美しさを信じていた青春の時はいつか終わる。しかしその夢を見続けたら優柔不断と後悔の恐ろしい悪夢に変わってしまう。大学を卒業し仕事をせず父母の遺産で暮らし大富豪の祖父の遺産を相続することを目論むアンソニー、自分の美しさに酔いやがて訪れる老いに怯える傲慢な美女グロリア。結婚した二人はパーティに明け暮れ父母の遺産を浪費して行きます。相手のために生きることのできない二人は底辺の生活まで転落していきます。底なし沼に沈んでいく青春に何とも言えない虚無を感じるのです。
2024/02/05
ケイトKATE
いい人であるがこれといった目標もなく友人たちと酒を飲んで語らうことばかりしているアンソニー。片や美貌を誇り男たちからチヤホヤされてきたことから相手に対して求めるばかりでわがままなグロリア。そんな二人が恋に落ちて結婚するが、お互い恋人時代の延長の夫婦生活を送ったため次第に転落していく様子が寒々と伝わってきた。特に終盤、現実と向き合わず屁理屈ばかりこねるアンソニーの姿は痛々しかった。
2019/08/10
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