敗戦真相記
敗戦真相記 / 感想・レビュー
どんぐり
著者の永野護は、閨閥で知られる永野家「6兄弟」の長兄(1890-1970)で、第2次岸内閣の運輸大臣を務めた政治家で財界人。本書のもととなる講演を日本の敗戦直後の1945年9月に広島市で行っている。戦争はどのように起こったのか、敗れた原因がどこにあったか、日本人の民族的資質に斬り込み、直截な物言いで論じている。その批評は激烈で、ボンクラ頭に刺激を与えてくれる。敗因の1つ目は、日本人素晴らしい、卓越した民族という誤った意識があったこと。
2023/04/25
Miyoshi Hirotaka
先の大戦に学ぶべきは、自らを貶める自虐史観でもその対極にある植民地解放論でもない。敗戦に至った原因に日本的なものが決定的に作用したかどうかが重要。なぜなら、仮にそのようなものがあったとすれば、明治を迎えることなく列強に分割統治されていたからだ。本著にも後の名著『失敗の本質』にもそのようなものはないということで一致する。つまり、あらゆる組織的行動は、固有名詞や人名が一般化された原因により、失敗にも成功にも向かう。終戦直後にこれほど冷静かつ的確に戦争という国家プロジェクトを分析した人が存在したことに瞠目する。
2022/04/10
kubottar
海軍と陸軍の仲がめちゃくちゃ悪かったことは知らなかった。ある所には「海軍用」と「陸軍用」それぞれ別の入り口があったり、お互いの足を引っ張ったりしていたとか。そりゃ戦争負けるわ。
2017/10/20
kawa
神保町の古書店で、元日経記者の田勢康弘氏の後書きにつられて購入。太平洋戦争の敗因を論じたものとしては、「失敗の本質」が名著として有名だが、本書での分析も多くが「失敗の~」に重なる印象。しかし、本書が凄いのは、敗戦後、僅か1カ月後の講演録であることだ。これほど的確に問題点を把握している人材がいながら破滅の道をたどった日本、「己の信念と相反するような場合でも、国家の奉仕のための大なり小なり、おのれ自身を捧げなければならないという三千年の伝統」という国民性が怖い。そのような流れに竿差す大人物が存在しない悲劇。
2017/04/30
GASHOW
居酒屋でお酒を呑みながら、話を聞かされているような感じ。現代の日本人として説教をうけているような感じがした。物事を伝えるアプローチにはいろいろあって、実際に話を聞くことができない状況では、本から話を聞いた感覚というのも良いものだと思う。
2017/02/17
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