追伸(新装版)
追伸(新装版) / 感想・レビュー
katsubek
さだまさしに「追伸」という歌がある。学生時代、サークルの先輩(女性)に、「あの歌に出てくる鴎外の本は『雁』だと思う」と言われたことを、不思議に覚えている。ところで、あの歌の歌詞は、どこからが「追伸」になるのかと、改めて考えたりした。さて、本書。偶然の出会いからの約1年間、男女が互いに宛てて書いた追伸付きの手紙が紡ぐ物語である。手紙はメールよりも切なく、SNSよりも重みがある。出そうとして出さなかった(出せなかった)手紙は、なおさらである。素敵なストーリー。じっくり楽しみたい作品である。
2019/02/10
阿部義彦
10/1発売だそうです。バジリコ株式会社刊。もとは1988〜89に、まんがライフオリジナルに連載されたものらしいです。森雅之さんは寡作であまり単行本も出てないですよね。たしか昔「ぱふ」に書いてた様な気がします。何回かの復刊だそうですが、今回初読みですがとにかく、さりげなく深いですね、電話がついても、「ねえー。だけど手紙も頂戴ね!」この一言に痺れますね!女の子のバイト先はやはり本屋ですね。さまになってます。時という薬がこれから二人をどうするのか?この本は大切にします。
2018/10/03
nekonekoaki
北海道出身の漫画家。著書はずいぶんと出されているようだけれど、なぜこれまで目に触れて来なかったのかと悔やまれる思いの作者(作風)です。喜怒哀楽の表情、間のとり方や色使いなどとても好きです。手紙だから伝わること、手紙でなければ伝わらないこと、想いを文字にして相手に届けることの意味が、とても貴く感じることのできる作品です。2018年9月20日初版第一刷発行。1988〜9年「まんがライフオリジナル」に13回の連載。2004年単行本として出版。その後絶版状態からの復刊。
2023/09/30
デリダに『絵葉書』という奇妙な哲学書(作品?)がある。あれも、ラブレターの体勢を取っており、手紙の送信によるズレ(=差延)を主題としていたが、この『追伸』という作品も、そのような時間的/空間的、或いは恋人同士の感情のズレが作品の主題を構成する。中盤以降、電話という時間的/空間的な「距離」を縮減する装置の登場は、皮肉にも感情のすれ違いを広げるだろう(メールやSNSが発達した現代においてはより示唆的ではある)むしろ、必然的に遅延(=「追伸」)してしまう微細な感情を拾い上げてゆくこと、作品の掛け金はそこにある。
2020/02/07
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