ヴィクトリア朝幽霊物語(短篇集)
ヴィクトリア朝幽霊物語(短篇集) / 感想・レビュー
HANA
幽霊に纏わる八つの短編を収録している。と言っても英国版「菊花の約」みたいな約束を守る幽霊、裁判官の前に現れた殺された男の幽霊、犯罪を止める為に現れた友人の幽霊、不幸の前兆であるバンシーみたいな幽霊。と一編一編バラエティに富んでいて、どの話も読みながら興味は尽きない。それでいてどれも英国怪談の王道を行くといった雰囲気も併せ持っている。個人的にはレ・ファニュの「オレンジエ通りの怪」やギャスケル「婆やの話」がいい出来。特に前者は幽霊屋敷物としては現代に通じる出来ではないかな。注釈と作者紹介も行き届いていい感じ。
2013/05/22
ヴィオラ
不幽霊物語は、吉な予感がそのまま結果となって現れるから、驚きとは無縁だったりします。登場人物は、時にその不吉な予感に対抗しようともするんだけど、大抵翻弄されたまま為すすべもなく結果を受け止めるしかない。そういうジャンルの書き手に女性作家がここまで多い(解説によれば、7割が女性作家)のは、興味深い着眼点ですね。細かで丁寧な注も入っていて資料的価値も高い作品集になっています。結構探し回ってようやく見つけた(お値段もそれなりw)1冊ですが、内容自体はネット上に無料で公開されているので、興味を持たれた方は是非。
2015/11/16
酔花
アマゾンでやたら高騰していたのに憂慮されたのか、編訳担当した松岡氏が自身のホームページでPDF版を公開中。感謝。情報を教えて頂いたお気に入りさんにも感謝。さて、ヴィクトリア朝幽霊物語であるが、現代におけるホラー小説のように直接死や血を連想させる類いの作品は少なく、幽霊との一瞬の邂逅が語り手に影響を与えるという、ある種品の良い作品が揃っている。今日的視点からみても古びていない作品も多く、資料的価値のみならず娯楽作品としても楽しめるという非常にお得な構成。お気に入りはエドワーズ「鉄道員の復讐」など。
2014/12/19
すけきよ
全然知らない出版社だし、なんだか自費出版っぽい作りだなぁ……と、あまり期待してなかったんだけど、初訳ばかりだし、学校の教材で扱った作品から選んだという性質もあるのか、解説や注釈が非常に充実している。この頃の怪奇アンソロジーを手にしたことがあるならば、見覚えのある作者の名前が並んでいるけど、未訳は山のように控えているんだなぁ、と実感。お気入りは、「窓をたたく音」。怪奇現象は題名通りの音だけだし、フィクション的盛り上がりもあまりないんだけど、それだけに自分も体験しそうなリアリティがあり、薄気味悪い。
2013/05/16
Susumu Kobayashi
イギリスの古典的な怪談(幽霊物語)を8編収録した作品集。初訳はダイナ・マロック「窓をたたく音」、コリンズ「牧師の告白」、レファニュ「オンジエ通りの怪」、ブラッドン「クライトン館の秘密」の4編。1か所、落丁ではないが文章につながりのない箇所があった。とはいえ、こういう古風な怪談の好きな者にとってはありがたい作品集であるので、今後も続けてほしいと願っている。個人的にはレファニュの作品が一番怖く感じられた。
2013/04/06
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