春戦争 (新鋭短歌シリーズ7)
春戦争 (新鋭短歌シリーズ7) / 感想・レビュー
ぐうぐう
「ほどけゆくけむりをわけてあらわれる青魚わが喉を見ており」冒頭の一首から、ハッとさせられる。陣崎草子の歌は、人の油断を容赦なく突いてくる。上の句を、あえて全部ひらがなで表記しているのも、読む者の油断を誘っているのだ。私達がハッとさせられるのは、何も油断だけにあるのではない。彼女の歌が、世界の真理を形容しているように感じられるからだ。日常の、自然の、生活の、そんなありふれた描写の形を借りて。戦場の歌が多いのも、日本の日常から戦争を見透かす彼女の歌人としての能力ゆえに可能なのだ。(つづく)
2017/09/03
kaizen@名古屋de朝活読書会
陣崎草子 短歌 永遠の着水静けさの海へ衛星が散る日に落とす鍵(キィ) 朝の陽にうばわれてゆく爪たちを見送る湖底あれは幸い 晩夏、あの湖面に散っている爪のうすももいろの静けさを聴け 他人の水盗んできては全身に揉み込んでいる三日月の庭 野菜多く買ってなにやら安心しお茶飲んで正座しておれば虫 うだる夜の恋人の胸に滑らせるバターずいぶん海を見てない 春戦争いつまでもずっと開いてるぼくのノートに降りてこい、鳥 返歌 夏戦争すいか割りなり君の声こっちは嘘だ潮騒ゆらぎ
2016/12/14
双海(ふたみ)
著者は絵本作家でもある。私の力不足が原因なのだが、難解だなぁと思いながら読み通した。「好きでしょ、蛇口。だって飛びでているとこが三つもあるし、光っているわ」
2022/03/10
はち
新鋭短歌シリーズも後半。この歌集は非常にビジュアル的。俺の歌とは正反対だなぁ。作者は絵描きらしい。とてもカラフルな印象の歌集。
2013/12/01
gelatin
★★★★(★) 児童文学というか絵本作家かと思っていたら歌人でもあった陣崎草子の歌集。自選句に入っているけど蛇口の短歌はあまりにも穂村的であり同人「かばんの会」的なのでひとまず置いといて、バターだの白磁の皿だのいかにも東直子セレクションなのも置いといて、そういうのを除いた中に(そういうのももちろんいいのですが)、あっさりと心に切り込んできてその素早さに血の一滴も出ないような、キレのいい歌がある。定型のものが好き。「軽く罪にぎって風の中をゆく さほどでもなき人生をゆく」
2017/09/07
感想・レビューをもっと見る