タルト・タタンと炭酸水 (新鋭短歌シリーズ)
タルト・タタンと炭酸水 (新鋭短歌シリーズ) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
これは素晴らしい。清新な詩情を感じる歌が多くて、読んでいるとうっとりした気持ちになった。この歌人はカメラ・アイで日常のさり気ない情景を切り取って、歌を作り上げるのに長けていると思う。さり気ないユーモアを感じる歌もあって、この歌集の中ではそういった傾向のものが一番の好みだった。好きな歌を一つご紹介。「手を離すだれにも気づかれないように小さいちいさい紙飛行機を」
2015/10/27
kaizen@名古屋de朝活読書会
竹内亮 短歌 透明人間の君と海にゆく波が体を揺らす夕暮れ 煤の舞う竃で沸かす風呂場には七年ぶりのシャンプーの黄 天気雨のように泣くひと横にいて背中をたたくことができずに 地下水で淹れた紅茶に口をつけ君は絵本の記憶を話す 夜の川に吸い込まれてた光たちが青に戻って空へと帰る 御茶ノ水二つの橋で向きあって水面流れる花びらを見る コーヒーの粉でつくられた砂の城白磁の国に白湯はあふれて 返歌 珈琲の粉混ぜ土で芽を出した緑の国の若芽黄緑
2016/12/14
橘
題名に惹かれていた歌集です。詠まれた情景が綺麗でした。綺麗過ぎて、するっと読んでしまいました。残るものはあまり無い気がします。
2018/09/27
太田青磁
柔らかい君のベースに積み上げる光る旋律高く響かす・地下水で淹れた紅茶に口をつけ君は絵本の記憶を話す・キッチンで知らない歌を口ずさみ君は螺旋のパスタを茹でる・終電の一駅ごとに目を開けてまた眠りゆく黒髪静か・雨の夜に白い傘さし左手に青い傘持ち駅へと歩く・さえずりは西荻窪で交差してペパーミントが君から匂う・岬へと向かう線路の表面は6センチ幅の光伝える・鉄橋は無数のネジに締められて線路の音は調律される・リスボンの街の書店で手に取った読めない本を川辺で開く・カーテンのそばでラベルを確かめて返却ポストに本を滑らす
2015/05/29
あや
30代前半にやめた短歌を40代後半になって再開するきっかけのひとつとなった歌集。何気ない日常を詠んでいるけれどそれはとてもかけがえのない瞬間である。恋愛も日常の中のふとした気づきも。「タルトタタンと炭酸水」の読書会に参加しあこがれの歌人東直子さんが生でお話されるところを目撃できたことも大きい。その節は大変ありがとうございました。詩歌を愛することってこんなに楽しいと気づくことができた。読み進めているうちに、え?炭酸水どこに出てくるの?というのがこの歌集のあるあるではなかろうか。
2020/03/22
感想・レビューをもっと見る