文学ムック たべるのがおそい vol.6
文学ムック たべるのがおそい vol.6 / 感想・レビュー
阿部義彦
待ちに待った「たべおそ」とうとう6号になりました。冒頭の「野戦病院」からむむっとなりました。一体いつの時代のどの国の話なのだ?著者は敢えてそれを拒む書き方をしています。抽象的な状況設定。戦時下とは?病院ってもしかして精神科?等など不穏なまま取り残されて、何もかも分からない。次の酉島伝法さんの「彼」も凄いです。今回は正調な言葉遣いですが一度死んだ男が再び動き出すって話は筒井康隆さんの小説にもありましたがコレは、また全然別の展開で謎が謎を呼ぶ兎に角この二篇でお腹いっぱいですが、更に、、今回も濃かったです。
2018/10/28
チェアー
最初から最後まで読める雑誌。今回の特集はミステリー。でもこの雑誌のミステリーは普通とは少し違う。心の深いところが揺さぶられ、声を出せなくなるような怖さだ。今回の収穫は酉島伝法の「声」。読み進むほどに「彼」がどんな人間だったのか、本当に生きていたのか、わからなくなる。
2018/12/11
辛口カレーうどん
ミステリ特集だったため、ビターな後味のものが多い。佐藤究氏の『ボイルド・オクトパス』は、えっ実話?創作?どっちだろ…と戸惑うほど臨場感があり、ドキドキしながら読み進めた。翻訳作品の『三つの銅貨』はブラックな寓話風でこれまた後味が苦い。深緑野分氏の『メロン畑』もひんやりと体温の低い文章でよい。北野勇作氏は、いつものようにメルヘンにグロが混じった独特の世界観。夕暮れの街をさ迷うような心細さがいい。そして大好きな石川美南氏の短歌。やはり好きだ。毎回すべて読める文芸誌ってこの本だけだから、ぜひ長く続いてほしい。
2018/10/18
メルキド出版
大滝瓶太「誘い笑い」
2019/02/23
渡邊利道
文芸雑誌とアンソロジーの中間みたいな感触の本。「野戦病院」「彼」の二編はまるで翻訳の奇想文学を読んでいるかのようなクールな作品でとても面白かった。大滝・北野両氏は安定の面白さ。ミステリ特集はどちらも残酷な味わい。短歌・エッセイも飛ばさずに読めて、バラエティーと読み心地の良い統一感のある紙面で、「本は最初から最後まで全てに目を通されるべきだろう」というあとがきに成程と思った。
2018/12/24
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